顔 下巻
⑱三日目 #5
驚愕の現象が起きた割には取調室は、静かで緊張感で張り詰めていた。
鉄格子のはまった窓の外は木枯らしが吹いているのか
冷たい冬の風が、窓ガラスを叩いていた。
陽は傾き、オレンジ色の弱々しい陽光は、来るべき逢う魔が時が
とても暗いことを暗示しているようだった。
大川は目の前で起きたことがまだ信じられず
鏡があるわけでなし、なのに目の前の男は自分と同じ顔をしている。
自分が発狂寸前なのを、感じるほど・・客観視もしていた。
そうでなければ、狂っているだろう・・。
口の中の乾きが気になった。
舌がざらついていて、しかし唾液も干上がってしまったのだろうか。
エアコンが壊れているのか、妙な寒気を感じた。
窓の外は、もぅ暗くなっていた。
大川は理性が保たれる言葉を探した。
何か言葉を見つけねば。
中井は何をしているんだ?
早く来いよ!
大川は、無理矢理、言葉を捻りだした。