顔 下巻
「どんな骸にしても、死者の骸は敬わねばならん。迷わぬ魂を作らんために。」
オレの顔をしたアイツは振り返ると、二之宮の顔に変わった。
「おまえは他人の姿形を盗んでしまった。目鼻があるものに魂は宿る。
宿るものをなくした魂たちは、トコヨにも行けずカクリヨに隠れることも
出来ずに彷徨うままだ。この先もずっとな。」
「そしておまえはコトもあろうに、魂の宿っていた骸を。
顔を・・・。なんと罰当たりな。
その骸を失ったものたちが。おまえらヒトの記憶にすら。
それほど長い時間は残ることのできない、その魂たちの無念が。
哀れでならんと嘆くものが多くてな。」
なんだよ、俺を殺すとでも云うのか?
「場合によってはな。だが、私も面倒は御免だ。
自分で死ぬなり、刑務所に入るなり、好きにしろ。捕まれば死刑は免れない。
殺しあうのは我々よりヒトの方が、その能力に長けているからな。好きにしろ。
ただ、お前はトコヨにもカクリヨにも行けない。
おまえの魂は彷徨うことすらも許されはしない。」