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アリス・スターズ
アリス・スターズ
novelistID. 204
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妊婦アリス・スターズの話

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 会計を済ませた――また母性健康管理指導事項連絡カードを出してもらったため、1050円だ――後、クロエはデミ子に戻っていった。アリスは引き続き待合室で待機し、呼ばれたのでマミールームに入る。
 以前もらったスプリングウィメンズクリニックの案内冊子を携えた助産師が、ローテーブルを挟んでアリスの対面に座る。
「えーと、今日はおっぱいマッサージのことについてお話しますね。母乳で育てたいっていう希望はありますか?」
「そうですねー、出来る限りは。」
 母のヨナ、妹のフィノン共に母乳がすぐ止まってしまったのを知っているが、できるなら母乳で育てたいという思いがあった。確認させてくださいね、と言われたので着ていたチュニックを無理やり捲り上げる。どちらかというと貧乳だったアリスだが、妊娠してからは軽く1サイズ上がっている。乳房に刺激を与えると、右と左で若干形の違う乳首のどちらからも少し白い液体が出てくる。これはここ最近になって出るようになっていたものだ。
 診断は「陥没乳首(左のみ)」。
「今からマッサージをしておくと、治るかも知れませんね。お風呂の時とかにやってみてください。」
 そう言われて、マッサージの方法を教わる。お腹が張る時はしない方がいい――早産の原因にもなるらしい――が、生まれてくる子供が飲みやすいように、そして傷に強くなるようにしておくのは重要なことだ。少々面倒臭がりのアリスだが、簡単なことではあるし少しずつ始めることにした。

 夜。
 家に帰ると、まずレンちゃんの様子をチェックする。本当ならプラスチックの水槽のようなものに入れるのが正しいのだろうが、1ヶ月も使わないのに買う必要はないと考え、クロエの仕事靴を購入した時の箱にヒーターと新聞紙を入れて、蓋にすでに購入しておいた鳥かごの床網をかぶせた簡易飼育箱の中でレンちゃんはおとなしくしていた。さっそく粟玉を湯でふやかして、スプーンでこれでもかというほど与える。雛特有の鳴き声を発しながら粟玉にがっつくレンちゃんも、お腹いっぱいになったのか5分後には食べなくなった。生後1ヶ月は過ぎているだろうので、あと1週間もすれば湯でふやかさない餌も食べるようになるだろう。それまでには鳥かごにも移せるだろうか。