妊婦アリス・スターズの話
2011年1月1日
毎年やっているお笑いのスペシャルと電波時計。ベッドサイドに、持ってきた赤い衣装ケースの中にぴったりお尻のはまったミオ。夕食前と同じ配置の3人。ミトの手の上には、3人が共通して持っているみかんを狙って出てきた黄色いセキセイインコのうんぜん。
いつからか、みかんを食べて年を越すことが恒例になっていた。もう8年は続けているのではなかろうか、メンバーは年によって増えたり減ったりしたが、2011年は元祖年越しみかんの3兄妹で迎えることができた。
その夜はリビングの右手にある神の間に敷いた布団で、アリスとフィノンとミオの3人が並んで寝た。
元旦の朝。
「お雑煮、餅何個?」
木の箱の蓋を開けながら、ミトが聞いてくる。
「んー、とりあえず2個かな。」
その中には家でついた丸餅が、粉のたっぷり付いた状態で並んでいる。そのうちの2つを取り出して、軽く粉を洗い流して鍋のお湯に入れる。隣の鍋には、お雑煮用の澄まし汁――山口県にも関わらず、お雑煮は関西風だ――が入っている。柔らかくなった餅と澄まし汁をお椀に入れ、ニコニコしながらアリスは席に着く。
「あー、ほんまつわり終わっとってよかったー。」
食べにくいほどに柔らかいお餅は、あっという間にアリスとシンシアの栄養になった。腹持ちの比較的いいはずの餅を2個食べても、まだもう1つはいけると思ったアリスだったが、そこは昼に食べることにしてぐっとこらえた。
お雑煮を完食して、少しじゅんちゃんと戯れてから離れの2階に上がろうか、と玄関を開けると。
「……これじゃ、帰れんじゃあ。」
昨日から降り続いた雪は20センチに到達し、しかも下手に気温が高めなため、雪が重たく湿ってぐしょぐしょになっている。家の前はガードレールがない上に崖のようになっているため、いくら雪道に慣れたアリスといえど、これを行くのは危険だと判断する。賛同するように、シンシアが少し動いた。
仕方がないので、3兄妹は今日もミトの部屋にこもることになった。
作品名:妊婦アリス・スターズの話 作家名:アリス・スターズ