小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
アリス・スターズ
アリス・スターズ
novelistID. 204
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

妊婦アリス・スターズの話

INDEX|24ページ/40ページ|

次のページ前のページ
 

2010年12月31日


 大晦日。
 アリスはフィノンとミオを連れて、雪の積もる実家に帰ってきた。クロエは友達に誘われて遠出しているのでいない。独身時代にいつも入れていた車庫に、慣れたバックでタント君を駐車する。
 アリスの実家は、アリスの仕事場がある山のふもと、標高400メートル超の所にある。同じ市内の人でも詳しい場所を知る人の少ない、一番近い自動販売機が徒歩20分、一番近いコンビニが車で30分もかかるほどの田舎だが、アリス達はこの家が大好きだ。
 車庫があるのは、アリス達兄妹の部屋がある離れ。まずは母屋に顔を出すことにした。母屋に向かって歩き出すと、犬の鳴き声が聞こえてくる。だがそれはもはや恒例行事だ。玄関を開けると、1匹のチワワが真っ先に飛び出してきた。
「ただいま、じゅんちゃん!」
 アリスとフィノンの足元に飛びつき、リビングのこたつの周りを走り回るじゅんちゃんは、そんなに会うことがないにも関わらず、姉妹のことが大好きなのだ。今でも家の前をタント君が通るとそわそわするのだと、ヨナが話していたことがあった。アリスの前でひっくり返ったじゅんちゃんの腹を撫でていると、奥の部屋からアリス達の祖母、チハルが顔を出した。
「おかえり、よう帰ってきたね。」
「ただいま、ばあちゃん。」
 チハルはあまり背の高くないアリスとフィノンよりも低い背丈――これは年をとって腰が曲がったからではなく、元からだ――でにこやかに微笑む。フィノンが抱いていたミオも、にこにこと笑っていた。

 簡単に挨拶を済ませてから、アリス達3人は離れに向かう。急な階段を上って右側がアリスとフィノンの部屋――今は使われていない――、左側が兄のミトの部屋だ。
 戸を開けると、そこには四角い鳥かごが置いてある。鳥かごの扉は開け放たれたままだが、中には黄色いセキセイインコが入っている。普通ではありえないほど天井の低い――一度測ってみたことがあったが、天井の高さは170cmだった――6畳間のテレビの前の指定席に、ミトがいた。
「うえぇーい。」
 この兄妹しかしないだろう挨拶を交わし、フィノンはミトの後ろに、アリスとミオはこたつを挟んで向かい側にあるベッドに陣取って、夕食までの時間を和気藹々と過ごす。フィノンが専門学校に通うまでは普通だった光景のはずが、その普通すら懐かしい。来年はこの場にシンシアもいることになるのだろうか。

 夕食はヨナの手打ち年越し蕎麦を食べてから、実家の畑でとれた白菜を使った鍋だ。しょうゆベースの味付けで、これでもかというほどのこしょうをかけて食べるのが正式な食べ方だ。あっという間に白菜1玉が一家のお腹に消えていく。もちろん、ミオもとろとろに煮えた白菜とうどんをミルで挽いたものをペロリと完食した。