妊婦アリス・スターズの話
2010年12月11日
普段土曜日外出することの多いアリスだが、日曜日のこの日も珍しく連続で外出していた。理由はもちろんある。
「へぇーい!」
アリスに対してこの挨拶をする人は1人しかいない。妹のフィノンだ。
「まぁ今日からしばらくよろしく頼むよ。」
「分かっちょるよー。」
この日からしばらく、アリスの家にフィノンが居候することになった。理由は、フィノンが離婚することになりそうだからだ。アリスと同じ日、高校の同級生だった――とは後で知った――アポと結婚したのだが、アポがあまりにも仕事をせず、もしくは続かないので生活が出来なくなってしまったのだ。タクとミオ、2人の子供の親権も分けることになりそうで、フィノンの側にはミオがついてくることになっている。
タント君にチャイルドシートを積んでミオを座らせ、その他必要な物を積み込んでさっそくアリスの家に戻る。
2階には寝室のほかにもう1つ洋室がある。ただ、2人暮らしではこの部屋はほとんど使うことはなく、今は物置や洗濯物の室内干しに使っている。空けておくのも具合が悪いので、ここをフィノンに使ってもらうことにした。
ここに住みながらフィノンの新居を捜すことになり、12月23日に不動産屋に行くことになった。アリスの家が市営住宅で、もしかしたら許可が下りないかもしれないからだ。市営住宅は同居人申請が必要なのだ。
アリスはフィノンとミオを連れて、事前にネットで調べていた不動産屋へ向かう。母のヨナも一緒だ。
この不動産屋は、フィノンがまだ結婚する前に住んでいた家を紹介してくれたところだ。祝日ではあったが、情報では年中無休とあったから大丈夫だろう、ということで車2台で向かったのだが――
「はぁ!?」
「もう、なんかっちゃ!」
そこには、厳重に戸締りのされた不動産屋があった。
「年中無休じゃないんかい!もう、やれんでよー。」
「しゃあないけぇ、違うとこ行ってみよう。どこか不動産あるかいね?」
「うーん……あ、アパマンショップは?」
「それがあったか。よし、行ってみよう。」
駅前通りにあるアパマンショップは開いていて、そこで最終的に契約まですることになった。フィノンが仕事をしていないため契約者はアリス、保証人はヨナだ。アリスは今までに自分名義で一度も家を借りたことがないため、査定も通るだろう。
それからは、閉まっていた不動産屋の前を通るたびに「あの時開けてりゃ契約1件ゲットできたのにー」と言うようになってしまっている。
作品名:妊婦アリス・スターズの話 作家名:アリス・スターズ