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アリス・スターズ
アリス・スターズ
novelistID. 204
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妊婦アリス・スターズの話

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 診察室に通されると、真っ先に内診室に通された。いつものように手早く準備を済ませ、まだ見慣れない内診台に座る。機械音声の後、台が回転しながら上昇する。
 カーテンが開けられると、画面には白いものが映っている。シンシアだ。アイリーン先生が矢印を操作しながら説明を始める。
「えーと、こっちが頭。心臓はここで、これが手で、これが足かな。」
 右を向いた頭、心臓も元気に動いている。足は少し見えにくかったが、豆粒のような手がしっかりと見えた。眠っているのか、手足は動いていない。体長を測ると、24.1mmだった。前回と比べると倍近くの大きさになっている。
(おー、大きくなっちょるね。)
 思わず顔がにやけてしまう。まだお腹の中にいるシンシアに、もうすでに母性が芽生え始めていた。

 診察室に戻ると、前回と同じように机の上にエコー写真が置いてあった。
「体調とかはどう?」
 アイリーン先生が聞いてきたので、アリスはありのままを答えた。
 まず、つわりのこと。最近はつわり症状で動けない日が多く、仕事を休むことが多くなっていた。朝7時55分に電話をかけるのも慣れたものだ。日によって場長のヒースが出たり、事務員のソフィアが出たりする。ソフィアが電話に出た時はつわりはどうかと必ずと言っていいほど聞かれる。症状としては胃の不快感と吐き気、立っているのが辛いこと、においが気になるところまでは最初の頃と同じだが、程度は少し強くなっていた。体調不良には関係ないが、急に食べたくなるものがいくつかあった。普段はそこまで好まない辛い物や、そこまで意識して摂らないトマトソース、その他チーズや魚介類。つわり時期に食べていたものはお腹の子供の好物になるとはよく聞くが、シンシアは辛い物や魚介類が好きなのかもしれない。
 とりあえず、アイリーン先生に母性健康管理指導事項連絡カードを書いてもらう。少しでも気になることがあれば書いてもらいなさい、とソフィアに念を押されていたからだ。
「じゃあ、次は4週間後に来てくださいね。」
 そう言われて診察室を後にする。検査の料金も支払って、アリスは病院を後にした。

 後になって母子手帳を見て、貧血が引っかかっていなくてびっくりしたのはここだけの話である。