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アリス・スターズ
アリス・スターズ
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妊婦アリス・スターズの話

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2010年11月10日


 検尿を済ませ、妊婦検診の補助券に必要事項を記入しつつ、診察室で呼ばれるのを待つ。今日は2度目の妊婦検診だ。
 今日は採血もある。妹は過去のトラウマから採血が苦手だが、アリスは別にそんなことはない。フレンディアクリニックにかかっていた時も、ホルモン値を見るために採血してきていたのだ。それに、アリスは会社で犬の採血――犬の健康チェックのためだ――なら数限りなく行ってきた。むしろ、採られる側のほうが経験は少ないが、注射針を見るのは慣れたものである。
(あー、貧血引っかかるじゃろうなー。)
 過去にアリスは、貧血のために鉄剤を飲んでいたことがある。これもフレンディアクリニックにかかっていた時だ。最終的に「赤血球のサイズは小さいが、血清内の鉄分は問題ない」ということで鉄剤は4年ほど飲んでいない。ただ、普通に行われる検査は赤血球の検査だ。まず引っかかると見て間違いないだろう。
 じきに検査室に呼ばれる。アリスはいつものショルダーバッグを肩から下ろしつつ、検査室に入った。

 検査室ではまず体重を測る。脱衣かごに「DVDをお持ちの方は提出してください」と書いてあったので、上着を脱ぐついでにかばんから出して看護師に渡した。靴を脱いで体重計に乗る。52.1kg、いたって変化はない。
 次は血圧測定だ。アリスは自他共に認める低血圧、だが――
「えー……いつも、低いんですかね?」
 と看護師に聞き返されるほどの数値がはじき出されたようだ。
「あ、はい。そうですよ。」
 平然と返したがいいが、母子手帳の血圧欄に書き込まれた数字を見て、さすがのアリスも驚愕した。最高血圧76はあまりにも低すぎる。実家の血圧計で測った時も、フレンディアクリニックで測った時も、会社の健康診断で測った時も――健康診断の時は一度再検査になったが――、最高血圧が80を切ることは今までになかったからだ。
 もしかしたら、ここで使っているのが低めに出るタイプなのかも知れないと自己完結し、同じ部屋で次は採血を行う。以前説明があった有料検査4つのうち、クラミジア、トキソプラズマ、ATLの3つの検査を受けることにした。ここで聞かれたのは、この3つの検査が採血で行われるからだろう。
 採血管を次々に取り替えながら、看護師がアリスに話しかける。
「予定日はもう決まったんですか?」
「はい、来年の6月11日です。ちょうど、妹の2人目の子供の1歳の誕生日の前日なんですよ。」
「あら、そうなんですか。じゃあその子が連れてきたのかも知れませんね。」
「そう思います。」
 ミオの誕生日は2010年6月12日。前日に妹の家に泊まりに行って、その次の日に陣痛が起き始め、立ち会うことになったあの日を思い出す。
 シンシアの誕生予定日は2011年6月11日。それからちょうど1年違いの土曜日。不妊治療を経てやってきたシンシアは、ミオが連れてきたんだと姉妹の間でよく話している。そして、ミオが助産師にびっくりされるほどの超安産だったから、シンシアもきっと安産で生まれてくるだろう、とも。
 和気藹々と採血が終了し、次は内診の順番を待つために待合室に戻る。
(今日はどのくらい大きくなっちょるかな?)