妊婦アリス・スターズの話
2010年11月5日
朝。
(……あぁ、絶対夢だよね、あんなの。)
アリスは、ある夢を見て目を覚ました。
いつものようにクロエを起こし、弁当の準備と朝食を済ませて、体調も良かったため会社に出勤することにした。
昼休み。食事を終えて、いつものようにタント君の助手席で一時を過ごす。
(あれ、なんかのあれじゃったんかなぁ。)
まだ朝に見た夢を思い返していた。
簡単に言えばこうだ。
アリスはとある場所で女の子を出産する。それから、鉄階段を降りた先でバーベキューをしている親戚一同に、その子をこう紹介するのだ。
「カタカナで、シンシアって言います。」
夢はここで覚める。
(シンシア、ねぇ。)
創作活動を趣味とし、かれこれ創作暦16年になろうとしているアリス。その生活で生まれたキャラクターの中に、確かに「シンシア」は存在する。しかし、なぜ今になってその名前なのだろう。そのキャラは、もう6年も前に生み出されたキャラなのだ。
(しかしなー。夢、でしょ?)
アリスは、過去に見た別の夢を思い出す。
それは、妹が子供を妊娠しているときの話。長男のタクの時は「安産の神と死神の夢」で男の子が夢に出てきた。長女のミオの時は「夜の病院での母親捜し」でタクと一緒に女の子が出てきた。
そう、今までにアリスは、生まれてきた子供の性別を夢に見ることがあったのだ。特にタクの時は、生まれるまで性別が分からず、お腹の出具合から女の子かも知れないと言われ続けてきたにもかかわらず、だ。
(確かに姉妹の見る夢は当たるって言うけど、本人が見た夢ってのは当たるもんじゃろうか?)
考えたところで、答えが出るわけがない。昼休みも終わりに近付いているため、アリスはタント君を降りて昼からの仕事へ向かった。
その夜、クロエと話し合った結果。
性別もまだ当然分からない、お腹の中にいる赤ちゃんの胎児名を「シンシア」にすることに決めた。
作品名:妊婦アリス・スターズの話 作家名:アリス・スターズ