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アリス・スターズ
アリス・スターズ
novelistID. 204
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妊婦アリス・スターズの話

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 受付で支払いを済ませてから、少し待つと助産師からお呼びがかかる。案内された部屋は、4畳ほどの広さの畳の間だった。
「まずはおめでとうございます。」
「あ、ありがとうございます。」
「ええと、お産もここでするんですよね?」
「はい、その予定です。」
 助産師はバインダーに閉じられた紙束を取り出し、アリスの出産予定日を尋ねる。6月11日と答えると、紙束の後ろのほうを探し始めた。手の止まったところは、まだ真っ白の表。
「あ、6月生まれ最初ですねー。」
 どうやら、1番乗りだったらしい。確かに7週4日で出産予定日が確定するのは珍しいかも知れない。表の一番最初の欄に、アリスの名前と生年月日を助産師が書き込んだ。
 それから、置いてあった本棚から冊子を2冊取り出して、アリスに手渡す。1冊は「パパが読むたまごクラブ」のようなものらしい。これはクロエに渡せばいいのだろう。もう1冊は、スプリングウィメンズクリニックの案内と、妊娠中の注意がまとめられたものだ。
 ここで言われたことは主に、「つわり時期は食べられるものを食べる」「体重に注意する」「体を締め付けない」の3点。これからも助産師と会話することはあるらしいので、妊娠初期のことについて念入りに説明された。
「入院に必要なものも書いてますので、読んでおいてくださいね。」
「分かりました。」
 5分から10分の会話を終え、部屋を出る。入るときには見ていなかったが、この部屋の名前は「マミールーム」と言うらしかった。

 次に向かうのは保健所。だがその前に、道すがらドラッグストアに寄った。
 今までドラッグストアで見るところといえば、シャンプー、洗濯洗剤、台所洗剤、あとは風邪薬くらいだったが、今見ているのはベビー・マタニティ用品のところだ。
(妊娠中は葉酸を摂れって言うよね。……ん、なんだこれ?)
 手に取ったのはキャンディ。見てみると、2粒で妊婦1日分の葉酸が摂れるものらしい。そういえば、口の中に何か入れておくことはつわりを抑えるのにいいと聞いたことがある。高くないものでもあるし、それのジンジャーエール味を購入することにした。
 店から出て、さっそくそれを口に含んでみる。
(お、なかなかうまい。)
 もう1種類、レモン味もあったはずだ。今度試してみることにして、アリスはタント君を走らせた。

 2号線を1本逸れたところに、保健所がある。アリスはここに入るのは初めてだ。やけに車が多かったが、なんとか1台分の駐車スペースを見つけ、そこにタント君を停める。
 入るとすぐに受付があった。おそらくここで言えばいいのだろう、と受付の窓から人を呼んだ。