日向に降る雪
彼女はすっと目を細め、それから何度か首を縦に振るとぼんやりと口を開いた。
「では、どうするのですか?」
ありがたいことに彼女は特に茶々を入れずに続けてくれた。胸をなでおろしながら私も話を続ける。
「これは私が償うとしよう」
「……そうですか、では、私も少しばかりご協力を」
その提案に私は慌てて手をぶんぶんと振った。
「そういうわけにはいかない。これは元々私のせいなのだ」
「そもそも早坂先輩が自分で買いに行かなかったからこうなったのでは?」
「たらればを言っても仕方がないだろう」
「では、相棒として私にもご協力を」
「君は後輩だ」
「先ほど、先輩は相棒と呼んでくれました」
「ノリだろう」
「では、先輩。後輩として私にもご協力を」
「後輩にお金を払わせるわけにはいくまい」
「では、マスター。私にもご協力を」
先に窓から外に出た私は、彼女が地面に降り立つのを待ってから諦めを表すように、髪をくしゃりとやった。
「そのしつこさは賞賛に値するよ。仕方ない。では少しだけ貸してくれ」
「それで良いんです」
彼女は満足そうににこっと笑うと、例の装置を指差した。
「この機械はどうします?」
「これも一緒にあいつに返そう。もう色々巻き込まれるのはごめんだ」
そう言って向けた背に、彼女の声がかかる。
「ああ、そういえば、小日向先輩」
「なんだ?」
この次元移転装置を手に入れてから、私の人生はころっと変わってしまっているらしい。
「さっきの台詞。ちょっぴり格好良かったですよ」