日向に降る雪
時は、それから15分前に遡る。
汚い寮の部屋で待つ私の前に、待望の人物がむにょりと現れた。
「来たか、相棒」
「こんなことは夕飯前です」
さらっという彼女の手には、きっちりと次元移転装置が抱えられている。
「ごたごたが片付かないと、美味い飯が食えないからな」
私はそう返して、入ってきた窓から外に出ようとする。と、彼女が私の手のものに気づいたらしく、困惑気味に尋ねてきた。
「先輩、それは?」
私は苦笑を浮かべ、肩をすくめた。
「残念ながら、早坂の彼女は……」
「彼女を救うために過去に戻りますか?」
それは確かに魅力的な提案だった。私の財布的にも。しかし、私は首を横に振った。
「いや、私のようなちっぽけな器では、救う女は一人だけで精一杯だ」
そこで少し間が空いた。私はどうやら彼女に引かれてしまったらしい。似合わない台詞を真顔ではいたせいだろう。そもそも彼女は私と雪村さんの例の装置を使った騒動について、そこまで深く知っているわけではないというのに……。何をしたり顔で言っているというのか。