日向に降る雪
そんな私たちの会話を、やや苛立った口調で早坂が制止した。
「おい君たち。イチャラブするのも良いが、早いとこ例のブツを取り戻す手助けをしてくれたまえ」
「おっと、そうだったな、早坂」
「全くだ。早々に協力してくれないと、雪村君に、あなたが眼鏡美人にうつつをぬかしていたと報告してしまうところだ」
「勘弁してください、同輩」
「あら、先輩。彼女いたんですか」
彼女と断言していいものかは困るが、私は曖昧に頷いた。
「次元は?」
確信した。ああ、彼女は早坂の後輩だ。私は苦笑を隠さずに答えた。
「私たちと同じだよ」
「それは良かった。先輩まで次元を越える気かと思いました」
「ある意味、次元は越えたけどな」
「え?」
一瞬、間があったが、彼女はすぐになるほどと頷いた。
「ああ、四次元の方へ、ということですね」
理解が早くて助かる。
「その通りだ。ところで早坂」
「なんだ、小日向?」
「お前のあれは、ひとつしかないのか」
「ああ」
「では、あれを使って逃げられたら捕まえられないではないか」
「それを何とかするのが、君たち右腕の腕の見せ所だろう」
その傍若無人ぶりは、いったい何を自信としているのだろう。今度は天野さんも私と同じように肩をすくめてくれた。HAHAHAとどこからか笑い声が聞こえてきそうなシチュエーションだ。……そうでも無いか。