日向に降る雪
そんなどうでも良い話を終えた後、話は急に現実的な話へと変わった。秋という季節。そして修士1回生。つまり、またあの就職活動が始まる時期なのだ。彼女は博士課程に進むつもりはなく就職活動を始めたものの、やはり不安がつきまとうという話をしていた。私はやはり学部時代と同様に就職活動にさほど興味が沸かない。なるようになるだろう、という甘い考えで生きているわけではないが、それでもやはり焦燥感というものが全く沸いてこなかった。
のだが、今日このときを持って、私はあることを決意する。キッカケは夢の話である。私なりに真面目に彼女の話を聞いた上、ひとつ尋ねてみたのだ。
「やってみたい仕事って具体的に何か決まっている?」
「一応は、ね。でも、あまり贅沢は言ってられないよ。就職先があれば、ね」
そう言った彼女はちょっぴり切ない顔をしていた。
「言うだけなら無料なわけだし、ちょっと話してみたらどうかな? まだ将来を決めかねている私の参考にさせてくれ」
だから、少し道化になってみた。将来を決めかねているというのは本当の話だが……。
「……笑わない?」
どきり、とした。私は多分、彼女のことをもっと知りたいと思っている。それはもう切実に。堅実に。現実に。
「私、お嫁さんになりたいの」
瞬間、私は何としてでも就職することをかたく決心したのである。