小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

日向に降る雪

INDEX|11ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 

 律儀なもので、雪村さんはわざわざお礼を言いたい旨のメールを送ってくれた。異性と二人きりで会うというのは期待半分、不安半分……。いや、期待二分、不安八分というところだったが、もしやこれはデートと言っても過言ではないのではなかろうかという誘惑に負けた。初デート前の女子中学生かというくらい服装に迷い、これ以上良くなるはずもないのだが、何かの願いを込めて鏡を覗き込む様は、他人には見せられない。隠しカメラなど設置されていたら、発狂ものだろう。
 さて、そんな私だがとりあえず無難にまとめ、そわそわしながら待ち合わせ場所に出かけた。遅れてはまずいと思い早めに出た結果、約束の時間よりも30分早く着いた。遅れたら遅れたで良くないのだが、早ければ早いでよろしくない。一番の問題は、雪村さんの到着を待っている間、いったい何をすれば良いのだろうか。携帯を開いたり閉じたりを繰り返し、意味もなくあたりをきょろきょろとしてみる。ふと、私の視線の先にぴょこぴょこと動く人物を発見した。それはまさしく雪村さんであった。約束の時間まではまだ22分ある。なんと早いご到着か。
 彼女は私の姿を発見すると、小さく手を振りながら近づいてきた。なるほど。恋とは厄介なものである。何故、私は彼女を直視できないのであろうか。全くもって自分という人間の小ささに呆れるばかりだ。
 彼女に言われるまま、私たちは近くの喫茶店に入ることにした。店内はコーヒーの香りで溢れており、少しだけ心が落ち着いた。彼女の前に座りモカを注文する。雪村さんはカフェオレなどという可愛らしいものを選んだ。待て。カフェオレが可愛らしいのか。それとも、カフェオレを選んだ雪村さんが可愛らしいのか?
作品名:日向に降る雪 作家名:彩月空