続々・三匹が行く
いっそ魔法でかたをつけてしまったほうが早いのだが、それは大事になるし、何より彼らの息つく間のない攻撃には悠長に呪文を唱えている暇はなかった。
「…………」
次第に息が上がっていくのが自分でも分かった。
さすがにやばいかと思い出した時だった。彼が現れたのは。
「一対二は卑怯でしょう」
「!?」
イジューインだけではない。あとの二人も驚いた様子で声のした方を見た。
そこには一人の男が立っていた。
この場に相応しくないにっこりと穏やかな笑顔を浮かべてこちらを見ている。
その顔にイジューインは見覚えがあった。
「……ゆ、ユキさん!?」
「あ、覚えていてくださったんですか、イジューインくん」
「ユキ? あのテンプルナイツ副隊長の!?」
「おや、僕も有名になってしまったみたいですね」
驚いた様子で言った暗殺者たちに対して、新たに現れた彼は困ったように苦笑した。
「さて、と。一対二は卑怯ですから、加勢させてもらいますよ。といってもその前は……一対六だったんですか。随分頑張りましたね、イジューインくん」
「……ユキさん?」
「ご苦労様でした。そして遅くなってしまって申し訳ありません」
「いえ、そんな……」
「じゃあ、さっさと終わらせてしまいましょう」
にっこり笑ってそう言ったユキの手に握られている剣は、曇り一つなく月の光を反射して輝いた……
翌朝。
「頭いたい……」
「あんなに飲むからでしょ」
「にしても、何で俺とチヒロが一緒のベッドで寝てたんだ? 俺、床に座ってたのに」
「どうせお前がもぐり込んできたんだろ。こっちは狭くていい迷惑だったぜ」
「なんだと!」
「はいはい。朝っぱらから喧嘩しないの」
相変わらずの光景。
最後の朝だというのに彼は全くいつも通りである。
チヒロ達はチヒロ達で賑やかだったが、もう一方もかなり賑やかだった。
「……なんかすっげー飲んじまったなあ」
「ちょっと羽目外しすぎたか……」
「隊長にばれたら大変だよなー」
階下の食堂で一足先に朝食を取りながらテンプルナイツたちは笑いあう。彼らも結局は一人の人間である。
そんな彼らは不意に聞こえてきた声に背筋が凍った。
「昨日は随分とお楽しみだったみたいですね」
「!!!」
「……な、何故ここに……?」