続々・三匹が行く
黒い髪をきっちりとまとめ、丸い眼鏡をかけた神経質そうな青年。手には一冊の書物を持っている。その瞳には明らかにこちらを卑下している色があった。
「やはり他の者の方が良かったのではないですか?」
しっかりとした体つきに射るような瞳。力こそ全てと思っているような感じを受ける青年。
王には四人の王子がいるとイジューインは事前にシノノメから聞いていた。シノノメの話から察するに、最初のが第二王子、次のが第三王子、そして最後のが第一王子だろう。ナルシスト、本の虫、筋肉馬鹿。冗談で言っているのかと話半分にシノノメの言葉を聞いていたイジューインだったが、実際目にしてみて納得した。
(……あれ、そういえば……)
もう一人の王子の存在にイジューインはふと思い当たった。
彼だけは自分に対して何も言ってこない。
シノノメは第四王子の事を何と言っていたかとイジューインは思い返す。
『良く言えば自由奔放。悪く言えば単純明快。だが、結構お主は気に入るタイプかもしれんのう』
そう言われて気にならないほうがおかしい。
あくまで無遠慮にならない程度に視線を動かしてイジューインは末席に座る少年を見やった。
年は二つほど下。ちょうど弟のチヒロと同じ位。恐らくずっとそうして見ていたのだろう。視線はこっちになくずっと横の窓の外を見つめている。こちらに関心がないといった方が正しいのだろう。つまらなさそうにつかれた頬杖と、遠くを見ている瞳。
公式の場にあって、およそ王族に似つかわしくないその態度が妙にイジューインの気を引いた。
遠くを見つめるその瞳にあるものは、まだ見ぬ世界への希望と自由への憧れ。
そんな瞳に心引かれるものがあり、再び王から声をかけられるまでイジューインは彼から目が離せなかった。
「では頑張って修行に励むように。そなたが立派な宮廷魔道士になることを期待しておるぞ」
「……は、はい。頑張ります」
またしても咄嗟の事だったので反応が遅れた。
くすくすとからかうような声が聞こえたが、そんなことはもう気にならなかった。王に対して礼儀正しく作法通りの礼をして、イジューインはその場から静かに退出する。
結局、第四王子センリは、最後まで彼の顔を見ようとはしなかった……
「どうじゃった、この国の王と王子たちの印象は」