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地球が消滅するとき

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 久しぶりの豪勢な夕食を囲んで、まずは食べることに熱中。食材はここの市場でたいていは手に入る。これほど開けている村とは思ってもいなかったのだ。
 そうしてまもなく、お喋りがあちこちで始まった。行き帰りのこと、パンジャ村でのこと、パンジャという不思議な鳥と女性のこと、石田君の麻酔銃の腕前のことなどの話題で、にぎやかな夕食の席に変わった。

「いやぁ、女性陣もなかなかにぎやかでしたが、こうしてみんなが揃ってお話を聞きながら食事ができるのは、やはりいいですね」
と毛利さんはにこやかに言って、はしゃいでいるようでもある。
「うるさくて、ご・め・ん・なさいね」
と皮肉交じりに言ってやった。

 続いて、コーヒーを飲みながらのミーティングが始まった。
「次の満月は9月18日です。ちょうど15.0レイです。その時には、私も絶対行きますから!」
とまずは宣言しておいた。

 榊原君については、飲み水を作るためのフィルターと浄水剤、持って行った食料(レトルトや宇宙食など)はすべて置いてきたので、1カ月ぐらいなら健康を損ねることはないだろう、ということだった。

 石田君の報告には、腰を抜かすほどに驚いた。
 パンジャという鳥はテレパシーを使うということ
 パンジャ族は、元アトランティス人で、伝説のアトランティス大陸が海底に沈んだ時不思議な場所に流れ着き、何千年もたってから再び同じようにしてここへ流れ着いていたこと
 パンジャを世話しているアトランティデスという女性は、パンジャと共に300年以上生きてきたこと
 『賢者の石』というものがあって、どうやらそれを粉末にして新生児に飲ませて、育ててきたらしいこと
など。

「日本に帰ったら、パンジャ族の血液とオオコウモリの血液とをDNA解析してみます。それによりパンジャ族の出自が分かって来ると思います。ま、それには数カ月要するでしょうが」
 山田さんらしく、締めくくってきた。
「27日には、抗体の有無が確認できるでしょうし、その結果によって今後の対応を検討していきたいと思います。
 ところで木下さん、鉱石のほう、成果はどうでしたか?」

「ここでは成分分析まではできませんが、目視によってみたところ、モナズ石が豊富なんです。モナズ石は弱い放射能を出しているのですが、トリウムやセリウム、ネオジムなどのレアメタルを多く含んでいます。早速会社にメールしておきましたよ」

「木下さん、メールは盗聴されてまっせ」
 居眠りしていると思っていたボンザリ君が、さっと顔をあげて忠告してくれた。
「『ますます元気です』と送ったんですよ。あらかじめ打ち合わせていた暗号文。これなら大丈夫ですよね」
 それを聞いて、ボンザリ君はまた腕組みをして頭を揺らし始めた。

「木下さん、トリウムって聞いたことはあるんですけど、どんな物質なんですか?」
と、私は尋ねた。
「トリウムは天然に多く存在しており、日本の土にも含まれているのですが、微量なんです。モナザイトに、モナズ石のことですが、それに多く含んでいて、中国やロシアが主産地です。今は貴重品でもあり、他国を牽制して禁輸しようとしているんですよ。
 トリウムは、ウランに替わる原発燃料として普及しつつあります。放射能廃棄物として厄介視されてきたプルトニウムを火種にして、燃やすことができるのです。温暖化対策と核なき世界を達成できるわけです。しかも、ウランより豊富に存在しています。
 トリウムを含むモナザイトは同時に、レアメタルの一種、希土類を多く含んでいます。これらは今や僕たちの生活に欠かせない物質なんです」

「あの・・・ということは、パンジャ村にトラックや機械が入って、あの岩壁を削り取っていくということになるんじゃないですか!?」
 石田君は激しい口調になっていた。
「・・・・・そうなるかもしれませんね」
 木下さんは腕組みをして、思案顔で上を向いた。
 みんなはうつむいていた。

「この素晴らしい貴重な自然はどうなるんですか! 動物たちの居場所がなくなるじゃないですか!」
「石田君、君はパソコンや携帯電話を持っていますね。国に帰ればエアコンをつけてテレビを見、車を運転するでしょう。ビデオカメラやCDも持っていますか。それらはすべて希土類を使って作られているんですよ。電気を送るケーブルもそうです。
 日本ではリサイクル産業が、世界に誇れるほど発展してきましたが、需要には追いつかない。しかも今や希土類は、どこからも輸入できなくなってきています。日本の経済と雇用、つまり日本で生活していくつもりなら、これらの鉱物資源を発見・採掘することは、緊急の課題でもあるんです。
 江戸時代の生活に戻す、というなら話は別ですが」

「パンジャ族の生活はどうなるんですか。珍しいコビトゾウやマルミミゾウやカバやチンパンジーやゴリラや・・・・・それらはどうなるんですか!」

「今すぐというわけではありません。アフリカ政府やコンゴ州の認可をとってからですから。それにもっと詳しい調査や準備などで、少なくとも1年はかかるでしょうし。その間に並行して、あなたがおっしゃった課題にも対処していくことになります。
 僕もパンジャ族が好きです。動物も好きです。彼らとは十分話し合っていくことになるでしょう」

 毛利さんが、やんわりと助け舟を出した。
「みなさん、このハウスの中を見回してみてください。すべての電子機器にはレアメタルが使われているのですよ。太陽電池にしてもしかり。血液を入れて持って帰ったボックスは保冷ができますが、太陽電池パネルが取り付けてありますね、それとつながるケーブルやモーターにも使われているんですよ」

 環境保護と生活の向上。いや、科学の進歩にもかかわっているんだ。どこかで折り合いをつけてきたし、これからもバランスを取りながら進めていかないといけない問題なのだろうなぁ。
 私は「フーッ」と大きなため息をつきながら、考えを巡らせていた。
作品名:地球が消滅するとき 作家名:健忘真実