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地球が消滅するとき

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「石田君はボンザリ君と仲がいいのね。なんの話をしてるの?」

 観光者向けに作られた簡素な休憩所で涼を取っている2人に、近づいて声をかけた。

「あっ、さくらさん。ボンザリ君って州政府のスパイなんだそうですよ」
「じゃぁ昨夜の話、ボンザリ君に聞かれてヤバイじゃない」
と言って、「テヘヘ」と言って頭をかいているボンザリ君に視線を投げかけた。

「いや、どちらかいうとそれとなく協力してくれてるスパイかな。日本が早く鉱物資源開発の申請をして実際に取り掛かってくれたら、契約料やら権利料やらが稼げて、雇用にも弾みがつくから後押しするように、言われてるんやそうです。投資せんとお金が入ってきて経済が潤って、万々歳。部族民から情報を集めるのに走りまわっていたそうですよ」

「日本が好きやからね。・・・アメリカやベルギー、フランスなんかが目を光らせてるから、気ぃ付けるようにしてもらわんとな」
「それでボンザリ君、ここの人は、自然破壊して鉱物資源開発することには、反対していないの?」

「僕は日本で6年間生活してて、たくさんの便利なもんを知ってしもたから、そういったもんから離れられんようになったんやけど・・・思うに、自然保護やら環境保護やら、声高に叫んでる人らはたいてい、そういう便利なもんに囲まれて暮らしてる人らやろ。
 便利なもんを手放せんようになって、その上にあぐらかいてるような人が、後ろめたさから自然保護やゆうて勢出してるように思う。うまく表現できんけど・・・」
 私も石田君も神妙に聴き耳をたてて、そして同意するように深くうなずいた。
「パンジャの人もゆうてましたけど、子供を連れてここに来たら、珍しいて便利なもんがいっぱいあるんで、村に帰りとうない、言うそうですわ。いずれ村の人らばらばらになるかも、って」

「珍しい人たちの村だからそれを守る、その形態のままでっていうのは、私たちのエゴなのかもしれないわねぇ」
「・・・そやけど、動物たちは守ってやらんと・・・・・」


 翌日、おなかが痛いという村人の手当てをしていると、松平さんが
「みんな、ちょっと来て」
と、血相を変えてやってきた。

 機器類が並ぶ空調室に入っていくと、本田さんが顕微鏡をのぞいて、そばで近衛さんがパソコンへの接続の準備をしていた。
「どうしたんですか?」
と言いながら、2人を取り囲んだ。

 全員が顔をそろえたところで
「これ見てください」
と言って、パソコン上に写し出された映像を指し示し
「オオコウモリとパンジャの大人の血液をそれぞれ2本選んで、培養してみたんです。全く同じ。これらはウイルスです。しかも数種類が入り混じっています。おそらく、SARSウイルス、エボラウイルス、黄熱病ウイルス、レトロウイルス、あと2種類ははっきり分かりません。対照に、ここで生活している人の血液も培養していますが、ウイルスは見つかりませんでした」

「彼らに既往歴はなく、何の症状も出たことがないことは、私が聞いて問診票に書き込んでいるんだよ」

「彼らって病気したことがないか・・・
通訳がうまくいってなかったのか・・・
病気を認識していないのか・・・ってとこですね」
 石田君がのんびりした口調で言っている。
「ま、もともと寿命が短いですしぃ」
 ジロリと石田君を一瞥した本田さん。

「さて、彼らとどのように接するかだが・・・・・
榊原君は大丈夫だろうか・・
 飲料水には気をつけること
 食べ物には火を通す
 消毒液は多めに持って行こう。口に何かを入れる前には必ず、手と容器を消毒すること、だ。
 これじゃ従来どおりってとこだが、一層気を使わないといけないね」
「こうなったら、パンジャのことをもっと知りたいですね。きっと何かあるんですよ。僕はもう一度行きます」
作品名:地球が消滅するとき 作家名:健忘真実