地球が消滅するとき
第3章
8月24日午後2時過ぎ、山田さん、木下さん、石田君、ボンザリ君らが帰ってきて、イトゥリの森・カプセルハウスに活気が戻ってきた。
「イタイ、イタイ」と言いながらハウスに入って来た彼らの首筋には、血を吸ってまるまるとしたダニが皮膚に食い入っている。
「つぶしちゃダメよ、引っ張ってもダメ。頭が皮膚の中に残ったら、後が厄介だからね」
と言って、アルコールに浸した脱脂綿で、一つずつ丁寧に取り除いていった。
「榊原君はどうしたの?」
「あぁ、彼はパンジャ族の生活が知りたいから、ゆうて残ってる。次の満月はいつかいな。その前日までにまた行くことになってるんや」
山田さんは、近衛さんが差し出した冷えたタオルで体を拭きながら、簡単に報告してくれた。
「ま、詳しいことは後でミーティング開いて、そん時に報告するわ」
パンジャ族の血液検体とオオコウモリの血液検体が入った箱を松平さんに渡して
「これの結果はいつわかる?」
と聞いた。
「ウイルス抗体の有無と種類の同定まででしたら、2・3日でできます」
と言いながら、彼女は箱の中をのぞいた。
「93本ですね。パンジャ族とオオコウモリ、それぞれ2本ずつ選んで培養してみます。概要でしたら、しあさってにはつかめると思います。ご苦労様でした」
近衛さんと一緒に試験室に入って行った。
木下さんから報告を受けていた毛利さんの表情が、みるみる崩れていくのから推察すると、何らかの発見があったに違いない。
「さくらさん、留守番ご苦労様でした」
と言って、木下さんが私の肩をポンとたたいて、2人は喋りながら部屋に消えていった。