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地球が消滅するとき

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 ある日、ミーティングの席にボンザリ君が重大で興味深い話を持ち込んできた。

 イトゥリの森の南西部に広がっている森林地帯に、長くて深い切り立った谷がある。オオコウモリの棲息地があり、その近くには小さな村があってパンジャ族というピグミーが暮らしている。彼らはそこに定住していて、すべて自給自足だという。ここから3日の所だそうだ。

 これを聞いた僕とメタル技術者の木下さんと榊原君は目を輝かせて、すぐに行こう、と提案した。木下さんと榊原君は数日間、近くを自転車を借りて動きまわっていたが、めぼしい成果が得られていない。

「ボンザリ君がいう谷はおそらく地溝帯だと思います。そういうところでは鉱石を見つけやすいのです」
 榊原君は深くうなずいて
「人類の化石なんかもあるかもしれませんよね。それにパンジャ族のことは初耳ですし」

 僕は無論、オオコウモリのコロニーに興味がある。何かのウイルスを保有しているかもしれないのだ。この1年間、自分なりに勉強もしてきたつもりだ。

 パンジャ族の村を『パンジャ村』といおう。
 そこへ行くには道なきジャングルへ入っていかなくてはならない。道案内と、医薬と試薬、生活必需品の運搬はムーブ族に依頼し、僕たち3人とボンザリ君、山田隊長が加わっての偵察隊が組織された。井伊さんも参加することを強く主張していたが、迅速な行動を要求されるかもしれないので、若い男性4人に山田医師が付いて行くこととなった。


 8月15日朝7時。パンジャ村へ向けて出発。10日間の日程である。

 高温多湿の中、歩きだしてすぐに汗が噴き出してきた。するとおびただしい数の虫が体にたかってきた。汗の塩分を求めてたかるハリナシバチだ。
 15センチのカマキリや30センチぐらいの蛾、20センチ以上もあるナナフシが木の幹をゆったりと登っていく。
 この赤道直下コンゴ盆地には、ゴリラやチンパンジー、ゾウやヒョウなどあらゆる陸上の生き物が生息しているといわれている。

 コンゴ川の支流、ザンガ川までは分かったが、地図は緑色に塗られているだけで、今どこに位置しているのか分からない。
 榊原君の提案で、5メートルのロープの端を僕と木下さんが持ってピンと張り、進行方向を磁石で確かめながら記録していくという方法を採用したのは正解かもしれない。起点はジャングルの入口にあるアフリカマホガニーという大木である。
 ムーブ族は荷物を背負っていても草やツタの中を軽々と歩いていく。そしてミツバチの巣を見つけると、日暮れまでまだ時間があっても、そこが本日のキャンプ地となった。
 手早く燻(いぶし)道具を作って、うまい具合に木登りをして巣を取って来ると、彼らはお祭り騒ぎよろしく、手をたたき歌い踊りまわっていた。蜜は彼らの最高のごちそうらしい。少しなめてはトローンとした表情になっている。

 ハチの幼虫を取り出してそこらの大きな葉っぱで包み、熾した焚火の中に放り込んでいる。すると、砂糖を入れて作った卵焼きの匂いがしてきて、たまらず僕らもお相伴にあずかった。
「ウマーい!」
 そうして宴会は日没まで続いたのだった。暗くなると火は消せない。月明かりが樹冠を照らしているのが分かるが、ここまでは届かない。交替で火の番と猛獣などに対する見張りをしてくれた。
 こうして、なるほど3日目にパンジャ村に到着したのだ。


 木を伐採して円形広場が作られていた。伐採した木をつるで組んで草をかぶせた高床式の家を、広場の周りに造っていた。10ほどあった。
 パンジャ族はムーブ族よりさらに小柄だ。

 マルミミゾウよりも小さい、肩までの高さは160センチぐらいだろうか、僕より低いゾウを2頭飼育していた。子ゾウではなく大人のゾウである。コビトゾウという珍しい種類だと思う。

 ボンザリ君がムーブ族の言葉を、ムーブ族のガブリエル君がパンジャ族の言葉を通訳してくれている。彼らは年に1・2回はイトゥリの森へ行っているというが、僕たち日本人が珍しくて絶えず人だかりができる。特に子供たちは好奇心があるので、触りまくられた。
 ボンザリ君がどのように説明してくれたのかは分からないが、彼らは少量の血液を提供してくれることになった。
作品名:地球が消滅するとき 作家名:健忘真実