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地球が消滅するとき

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 それから1年。
 参加者8人の顔合わせが、吹田市にある阪大病院医学部長室会議室で行われた。
 ドアを入って正面には大きな窓が一面にはめられており、部屋の真ん中に大きな四角い机が陣取っていた。その周りにはゆったりとした肘掛椅子が据えられている。入口の右手にあるホワイトボードには大きな張り紙がしてあった。

【ムーブ族(ピグミー)の健康調査及びウイルスの存在調査遠征隊】
   疫学研究所   山田雄作  遠征隊リーダー・医師
           井伊さくら 医師
   微生物研究所  近衛静   薬剤師
           松平かりん
   獣医学部講師  石田翔太  獣医
   人類科学研究所 榊原康男  元探検部
  越沢金属工業株式会社 (地質調査) 
   メタル技術者  木下コースケ
   電気技術者   毛利大介
                                     医学部長の本田道雄が一人ずつ紹介していった。
「私の隣におられるのは越沢金属工業株式会社開発部長の島津恵美さんです。前身の大阪府立大学工学部のご出身で、そのご縁から今回の遠征隊の資金援助をお願いし、お骨折りいただいた末に、実現へとこぎつけることができました。大変感謝しております」
 大学関係者たちは一斉に立ち上がって、深々とお辞儀をした。

「越沢金属の島津です。皆さんは【ムーブ族の健康調査とウイルス調査】を謳っておられますが、我が社の2人が参加させていただきますのは、レアメタルの調査を主眼にしております。そのための資金援助であると思し召し下さい。
 しかし、レアメタルの調査であることはご内聞に願います。どこの企業も、いえどこの国ものどから手が出るほど探し求めている物質なのです。
 アフリカ合衆国には【健康調査と地質調査】と称して許可をとりました。
 アフリカ大陸が統一されて1つの国になり内戦が終わったとはいえ、どこに危険が潜んでいるか分かりません。命第一です。危険を感じることがあれば即刻帰国されますように。何よりも皆さんが健康で無事に戻ってこられることを願っております。ご健闘をお祈りいたします」

 全員が軽く頭を下げたところで、遠征隊のリーダーである山田雄作が立ち上がって、説明を始めた。
「出発は7月12日、伊丹空港国際線ロビーに20時集合です。詳細はお渡ししたプリントに記載してあります。
 太陽光発電を利用できますので必要資材、各種測定器、生活必需品、食糧これは主に宇宙食を100日分用意しています。これらはすでにウガンダ州の首都カンパラにある日本大使館で保管してもらっています。そこからトラックに分乗して現地まで行きます。
 通訳は空港で出迎えてくれます。ボンザリ・カタンガさんです。
 出発日まで2カ月を切りましたが、黄熱病とマラリアの予防接種だけは済ませておいてください。
 事務局は、医学部長本田先生をリーダーとして設定しておりますので、何かありましたらそちらへお願いします」

 本田道雄は部屋の壁時計に目をやり
「では本日はひとまず顔合わせということで、7月13日以降からは24時間誰かが待機しております。通訳のボンザリ君は優秀な若者と聞いておりますので、いろいろ便宜を図ってくれることと思います。
 みなさん、身の安全を第一に考えて行動されますようお願いします」

「それでは、7月12日に空港ロビーでお会いしましょう」

               

「翔太、気ぃ付けて行っといでや」

「あんたが好きな動物といっぱい会えるんやなぁ」

「そやけど怖い病気がいろいろあるらしいし、毒へびやらサソリやら猛獣やらおるんやろ、そんなとこよう行くわ」

「翔太、こっから成田に行くんか」
「いいや、3年前に南海大地震があったやろ。あの時関西国際空港が海に沈んでな、ここから世界に行けるようになったんや」
「あの時は大変やったなぁ、そうか、関西空港は使えんようになったんか。そやけど伊丹空港は周りが住宅地で、騒音問題はどうしたんやろ」
「おばあちゃん、今の飛行機はエンジン音がせえへんのや。それに翼が太陽電池パネルで蓄電してて、1回の容量で世界1周できるエネルギーがあるんやで」
「あんたが小さい時飛行機見に連れてったげたけど、あの迫力あるエンジン音が聞かれへんゆうのんも寂しいなぁ」

「あっ、みんな集まって来はったさかい僕行くわ。おかん、おやじ・・おばあちゃん元気でな、ほな行ってきます」

 今回の遠征は内密事項もあるため関係者だけにしか知らされておらず、報道はされていない。

「女性陣は髪を短くされたんですね」
「だって、何日もお風呂に入れないんでしょ」
「日焼けが気になるけど、成果を上げることが優先ですからね」

『23時15分発エミレーツ航空EK317便カンパラ行にご搭乗のお客様は23番ゲートにお回りください』

「いよいよやな」

「みなさん、ご家族とのお別れはもうすみましたか・・・・・お見送りの皆様、私達8名これにて出発します。元気に帰ってきます。連絡が取りにくいかもしれませんが、80日間ご心配なくお待ちください」
「行ってきまーす」

 行ってらっしゃい
 気をつけてね
 生水はだめよ―――
作品名:地球が消滅するとき 作家名:健忘真実