地球が消滅するとき
9月14日、石田君とボンザリ君と私、そしてムーブ族から3人がパンジャ村へ向けて出発した。
帰国日が迫っているので、満月の翌日には村を出て、帰って来ること、とハードな日程だ。
山田さんは残って村の人の診療にあたり、近衛さんと松平さんはそれを手伝うことになった。
木下さんは、9月に入ってすぐにカンパラに戻って行った。越沢金属と連絡を取りながらコンゴ州と交渉に当たる、と言っていた。場合によってはコンゴ州の首都キンシャサまでいかないと、とも。29日に合流することになっている。
「賢者の石を少し分けてもらって、ここに入れてきてくださいよ」
と言って、小さな金属の筒を石田君に手渡していた。
毛利さんは、木下さんと一緒に、と言っていたが、電気の専門家がいないと、機械類やカプセルハウスの撤収のことが全く分からないし、不具合が生じたときに対処できないので、拝み倒して残ってもらった。
パンジャ村へ一緒に行きましょ、と誘ったが、やんわりと断られた。なんだか、虫が苦手だという雰囲気がしたから、きっとそうなのだろう。
頭にかぶったヘルメットごとスッポリと、ネットをかぶせて虫よけにした。見送りに集まったムーブ族や、他の部族の者たちは、大声で笑い転げていた。が、汗にたかって来るというハリナシバチやダニなどの虫のことを考えると、笑われようがどうしようが大したことではない。
が、が、厄介なことに、汗がふけな〜い! 滝のように噴き出る汗が目に入って痛いし、流れる汗にこそばい思いをしながらも我慢して、ジャングルの道を進んだ。
密林といえば薄暗い所というイメージがあったが、太陽が差し込むところもあり、しかも今まで見たこともない、いや虹でおなじみかな、色とりどりの光線が時間と共に移ろいでゆく。
「わぁ、きれ〜い」
と、石田君に同意を求めたのだが、彼は
「へえぇ、そんなこと全く気が付きませんでしたわ」
とのたまう。男性って、観察眼が欠如してるのかしらん。
今回はハチの巣のお相伴にはあずかれなかったが、前回のキャンプ地がそのまま残っていたので、それを利用して、だからわりとゆっくりと歩みを進めることができた。
そうして3日目に、パンジャの村に到着した。
元気溌溂の榊原君と再会できて、ほっとした。