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恋の掟は春の空

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引越しの朝で緊張で


引越しの当日は、とっても快晴だった。
「こんな、もんかなぁー 荷物って・・忘れ物ないかなぁ・・」
トラックの助手席の窓から、お袋に聞いてみた。
「あとは、もう、向こうで買ってよ。気が付いたら宅急便で送ってあげるから・・お金はとりあえず、さっきあげたのでやってね。足りなくなったら何を買いたいか言ってくれれば振り込むから・・早めに口座作っときなさいよー」
「じゃ。行って来ます」
高志さんは俺の声を聞くと、お袋と親父に頭を下げてトラックを動かしだした。
「なんか、思ったより荷物少なかったな。この下のトラックで充分だったかなぁ・・でかすぎちゃったかねぇ 車・・」
高志さんは、朝の8時だけどとっても元気だった。東京に着くのが遅くなっちゃうといけないからって、今日は朝の6時半からもう家に来ていた。おかげで、荷物を積み込んでもまだ、この時間だった。
あんまり家を出るのが早くなったから、さっき直美の家には電話で、「あと、20分もしないでついちゃうよ」て言っておいた。
「えー、まだ、起きたばっかりだけど、どうしよう・・」って直美は、あせった声を出していた。

日曜の朝だったし、田舎道だったから、叔父と東京まで道の話をしてる間にあっというまに直美の家だった。

直美が外に出て待っていてくれた。そんな子だった。
手を振ってくれた。しばらく会ってなかったけれど元気そうな笑顔だった。

車を止めて、叔父の高志さんと外にでると、おかーさんと、おとーさんと、おにーさんと妹と直美と全員勢ぞろいだった。おとーさんは初めてだったのでものすごく緊張した。
「劉ちゃん おはよう。早いねー」
さっきの電話だと寝起きだとばっかり思っていたけど直美は、ぱっちり起きているようだった。
「おとうさん、紹介するね 劉ちゃんね」
固まりそうだった。
「はじめまして、柏倉です。よろしくお願いします」
ありきたりだけどいっぱい、いっぱいだった。
叔父は隣で、一緒に頭を下げていてくれた。
「いえいえ、こちらこそ、よろしくお願いいたします」
おとーさんは静かな感じの人だった。
あわてて頭をふかぶか下げてたけど、その頭をあげるタイミングがわからなかった。
「じゃ、遅くなっちゃうといけないから、さっさとやりますか」
叔父がトラックの後ろの扉を開けながら直美のおとーさんに話しかけた。やっと頭を上げることができた。
「ヘンなの」
って直美に小声で笑われていた。

扉を開けてみんなで荷物を積みこむことにした。
「劉、って荷物これだけなの・・」
「え、机とベッドとあとは、なんかよくわかんないもの、かな・・」
自分でもこれで 生活できるんだろうかってな量だった。箱の中身はほとんど服が占めていた。下着なんか「洗濯どうせできないんだから」ってお袋がやたらと、詰め込んでいた。
「私、なんかいっぱいなんだけど・・」
確かに多そうだった。
「この ダンボールってなにが入ってるの・・」
俺の倍の量に見えた。
「なんか、いろいろ入れてたら、わかんないんだけど、こんなになっちゃった。向こうに着いたらいらないものいっぱいかも・・」
恥ずかしそうに直美は笑顔を返した。
「冷蔵庫とかは、やっぱり向こうで買うの、直美も・・」
「買わなきゃいけないねぇ。劉ちゃんもでしょ、一緒にいこうね」
うれしそうな顔だった。俺もうれしかったんだけど、隣に直美のおとーさんがいたので、あんまり笑えなかったけど。

「これで、もうないですかぁ。もういいのかな、劉」
元気な叔父に聞かれたので、おかーさんに聞くと、全部積み込んだみたいだった。
「全部、終わったよ、劉」
まだ、ちょっと寒い3月だったけど、汗をうっすら浮かべたGパン姿の直美が元気に答えた。
「早かったね、思ったよりも。で、直美んちは誰か一緒に東京くるんでしょ・・」
おかーさんが来るのかなぁって思っていた。
「うん。おかーさんの車だすから、それで行くね」
ほっとしていた。おとーさんが一緒にきたら、1日中、ドキドキしてなきゃいけなそうだった。
「じゃぁ トラックの後についてくりゃいいよね。大丈夫かなぁ・・スピード出さないように叔父には言っておくね」
「うん。私が横でちゃんと見て付いていくから」
けっこう、直美は、こういうところはしっかりしてたから安心だった。

おとーさんとおにーさんと妹に挨拶をして車を出した
トラックに叔父と俺で、その後ろの赤い車に直美とおかーさんだった。
たぶん、これから片道3時間以上の上京だった。
長い長い、1日の始まりだった。

すんげーうれしい日曜のはずだったけど、あたふた、ドタバタしてて、まだ、とっても そんな気持ちにはなれなかった。でも、人がみたら、顔はきっとニコニコしてるはずだった。俺も、直美も。
作品名:恋の掟は春の空 作家名:森脇劉生