恋の掟は春の空
新宿に向けて、あれやこれやで
コツンって頭を叩かれたら、コンビニで買ってきたらしいお握りと、あったかいお茶が待っていた。
「さっき、1回起きたのに熟睡だね・・」
ちょっと前に1回起こされていた。「お腹空いちゃったから、なんか買ってくるね、ちゃんと、もう起きててよー」って言われていた。
「朝ごはんはこれで我慢してね。明日からはきちんとしたのを食べないとだね」
たしかに お味噌汁は飲みたいなぁって思っていた。
「ねぇ 何時に新宿に行って電気製品買おうか・・叔父さん家には夕方でいいんだよね」
「うーん 午前中はさ、片付けしちゃおう。いつまでもこのままじゃどうにもならないでしょ。で、お昼から出かけようか」
どうにも、ダンボールを片付けないと気分が悪かった。きっと直美もそうに違いなかった。
「じゃ、食べたら私も、がんばってお部屋片付けちゃうね。よーし頑張るぞぉ」
俺も頑張らないとだった。
食事を終えると直美は「じゃ、あとでね。ちゃんと頑張りなさいよー遊んでちゃだめだからね」って言い残して部屋に戻っていった。
「さーやるかぁ」って独り言を言って、とりあえず食器とか台所まわり荷物をだしていた。じゃないと、いつまでもきちんとした食事ができそうもないような気がした。それはイヤだった。
それから、机まわりの荷物を片付けて、ステレオをつなぐとやっと音がする部屋になっていた。最後に洋服と下着を片付けた。
さっき 箱から出てきた目覚まし時計を見ると11時半になっていた。あとはいらなそうなダンボール箱をたたんで捨てればいいだけだった。
直美は、まだ頑張ってるんだろうかって考えていた。
ちょっとベランダに出て、直美の部屋ってこの隣の隣の下だよなぁって、ベランダの手すりから身体を出して見てみた。「うゎぁ」って声がでた。
直美も下からこっちを見上げるところだった。
なぜか、彼女とはこんな不思議な事がよくあった。彼女もそう思う時があるらしかった。
「終わったぁ?」声は出してないけど、はっきり彼女の口が動いた。
「いま、そっちに いく」声を出さないでちょっとおおげさに口を動かすとわかったようで、「うん」ってうなずいていた。
捨てようと思っていたダンボールを抱えて直美の部屋にはいると、さすがにきちんと終わっていた。
「あ、ダンボールいらないのあったら、いま、一緒に捨ててくるから・・」
「うん。ありがとう。こっちのはもう捨てちゃう」
見たけど、いっぺんには抱えられそうもなかった。
「とりあえず 1回捨ててきちゃうね。もう 全部終わったの?」
「うん。もう大丈夫かな。残りは少しあるけど、それはゆっくりでいいのだから・・」
「うん、わかった」
けっきょく、ゴミ捨ては2往復でなんとか済んだ。
部屋に戻ると、直美がコーヒーを入れてくれていた。
綺麗になったけど、おかげで余計に広さだけが目立つフローリングの床に座って、そのコーヒーを飲んだ。もちろんインスタントだったけど、おいしかった。
「じゃ、飲んだら新宿ね、で、途中でお昼ご飯で、その後に赤堤ね」
「うん。洋服どうしようか・・」
「え、普通でいいよ。平気だってば・・」
「劉はいいけど、私は着替えようっと・・だって叔母さんにも会うんだから・・」
「劉もGパンはやめたほうがいいよぉ」
少しはそうかなぁって思っていたからパンツだけでも履き替えようかなぁって思った。
「じゃ、ちょっと着替えてくるね」
言い残して部屋に戻って綿のカーキのパンツに履き替えた。
3階の彼女の部屋にもどって 驚いた。
綺麗な長いスカートをはいて、かわいいセーターの直美が立っていた。
「どう、これでいいかなぁ・・」
「うん、かわいいゎ、それ・・」
「でしょぉ、いいでしょこれ、お気に入りなの。劉初めてみるでしょ」
もちろん、初めて見る服だった。
「さ、お出かけしまーす」
直美は 笑いながら元気な声だった。
「あー 忘れ物だぁ」
玄関を出ようとしたらあわてて直美が叫んで部屋に戻っていった。
「よかった、気が付いて・・」
手に昨日のノートを持っていた。
「せっかく 書いたのにわすれるとこだった、よかったぁ 思い出して。あ、劉のバッグに入るよね」
なんとか、入りそうだった。
「もう 忘れ物ない?大丈夫?」
「うーん 一つあるんだけど・・ま、いいかなぁ・・」
キスをした。
「お、正解」
彼女は照れて大きな声を出していた。