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恋の掟は春の空

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豪徳寺の夕暮れに


大きな荷物は、ベッドと試験の勉強はしなきゃいけないだろうからの机だった。机の後ろ斜めにベッドを置き換えてみた。どっちが南かわからなかったけれど、たぶんこっちの方だろうって感じにしてみた。さすがに北向きだけはさけたかった。
あとは、ほとんど、ダンボール箱だったけれど、とりあえずの生活に困りそうな食器類と洋服を少しだせばいいやって思った。

「劉ぅ 鍵しめなさいよぉ。あぶないよぉ・・片付いたぁ・・どんな感じになった・・」
玄関から直美の声だった。
「うーん。全然終わらないけど、とりあえずは 寝れそうだから、いいや」
「私も、なんか、今日はもういいかな・・ちょっと疲れちゃった。でもさ、早く買い物にいかなきゃいけないものがあるんだけど・・間に合うかなぁ・・あ、劉ちゃんの部屋もだよ・・」
なんだろうって思っていた。
「ほら、こんなに窓おっきいのにカーテンないのよ。明日の朝から困っちゃう」
「あー。どっかに売ってるかなぁ・・これってサイズ測らないとだよねぇ。俺は明日でもいいけど、直美はさすがに困るよねぇ。駅まで行ったら売ってるかなぁ」
「早く行こうよ。カーテンだけは、今日つけようよ。駅までいけばたぶん、何とかなると思うよ。でもさ、メジャーないんだけどどうしよう・・」
たぶん、目の前の箱の中に文房具と一緒にドライバーセットとかと一緒に入れてきたはずだった。
「たぶん この中にあると思うんだけど・・」
言いながら箱の中を探すと緑色のメジャーが出てきた。一緒にノートも引っ張り出した。
「じゃぁ、これで、ここの部屋のを測って、それから直美の部屋の窓のサイズ測って、そのまま買い物に行こうか」
「うん。夕飯もちょっと早いかも知れないけど、今日は外でいいよね・・作ってあげたいんだけど冷蔵庫もないし、今日はパスね」
腕時計を見ると5時をちょっと回っていた。
ノートに簡単に窓の絵を書いてサイズを書き込んだ。こっちは窓が3個所でだった。
「じゃ、降りて、直美の部屋の窓を測ろうか・・」
「うん。何色にしようかなぁ」
直美はもう、カーテンの色を考えていみたいだった。
鍵を閉めて、直美の部屋に向かうことにした。
鍵を開けて、中にはいると、彼女の部屋も箱はいっぱいだったけれど広すぎてガラーンとしていた。
「私の部屋も窓は3箇所だから・・」
大きな窓が二つと中ぐらいが一つの窓だった。サイズを測って口に出してそれを聞いた直美がノートに書き込んだ。たぶんこれでいけそうな気がしたけれど。カーテンなんか買ったことないからちょっと不安だった。
「これで 大丈夫だよね」
言いながらメモしたノートを見せてくれた。
「ちょっと、着替えるから待ってて、すぐに行くでしょ・・汗かいちゃったから・・」
言いながら風呂場わきの小さい部屋に入っていた。
上着がそこに置いてあったので、それを手に待つことにした。なんか変な感じだった。
出てきたら髪を下ろしていて、かわいくなっていた。

「さ、早くいこう。お店終わっちゃうといけないから・・」
マンションを出て、右に折れて、また右に折れると駅の方向のはずだった。
世田谷線に平行に行けばいいはずだった。
「ねぇ このかわいい電車はなぁに・・」
世田谷線のことだった。これに乗ってもいけるよ。たぶん。そこに駅があるはず」
「へー これって 鎌倉の江ノ電みたいだね」
確かに直美が言うようにかわいい江ノ電みたいだった。
「ほら、ここが宮の坂って駅で、次の駅がたぶん豪徳寺の駅のそばにつくよ・この前調べといた。雨の日とかはこれ乗ったらいいかも・・」
「でも、歩くの好きだから、たぶんあんまり乗らないと思う。でも、今度一緒に乗ってみようね」
聞きながら左手を出すと、直美の右手が下から恥ずかしそうに、のびてきた。
「めずらしいねぇ 劉から手をだすの・・」
たぶん 初めてだったかもしれなかった。なんとなく手をつなぎたかった。少し都会の街に不安な感じの直美に思えたからかもしれなかった。

駅前に近づくと商店街が広がっていた。スーパーの大きいのがあったので入ってみる事にした。
「あるかなぁ・・ここに」
「なんか2階にありそうだよ・・」
直美に言われて2階に上がると売り場があった。
「よかったぁ・・あった。サイズあるかなぁ。ノート見せて・・」
言われてノートを直美に手渡した。
「これかなぁ・・あ、おそろいにしようよ、色・・」
「ピンクとかじゃなけりゃ、いいけど・・」
「あー これなんかどう・・」
手に取ったのは緑の綺麗な色だった。
「うん。これならいいよ。ちょっと待って、これでいいなら あの人にサイズ見せて、選んでもらおう」
近くにいた店員さんにノートを見せて選んでもらう事にした。
ちょうど在庫があって助かった。同じ色のカーテンを6枚もかごに入れるとそれだけでいっぱいになっていた。
「よかったねぇ おそろいだよぉ。外から見たら、3階のあそこの部屋と5階のあそこの部屋がカーテンいっしょだぁ・・って誰かに言われちゃうかなぁ」
うれしそうに笑っていた。
気をつけないと、明日買う電気製品もおそろいで・・とか言われそうな気がしていた。
カーテン入ったかごを右手に持っても左手はずっと、直美に握られていた。
たぶん たよりないけど この子のために、少しでもがんばろうって握った手に静かに誓っていた。

作品名:恋の掟は春の空 作家名:森脇劉生