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恋の掟は春の空

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あっと言うまに


20分って言われたけれど、15分ぐらいで、それらしいマンションの入り口に叔父の会社の車が入っていった。
「お、ここか、お前の兄貴の新宿のマンションよりは小さいけど、こぎれいそうな所だなぁ」
高志叔父さんの言うとおりだった。静かそう小奇麗なマンションだった。
「想像してたのと、全然違うんだけど・・」
「うーん。甘いねぇ、まだ。俺は想像より少し小さいって感じだもん。このマンション」
笑いながら言われた。たしかにそうかもしれなかった。
会社の人が車から降りてきて、トラックを停める場所を指示してくれた。

「どうしましょう。すぐに始めますか」
車から降りてきた女の人が聞いてきた。
「あのー。お昼先に食べてもいいですか。お腹空いちゃったんですけど・・」
もう時間は1時を過ぎていたし、朝が早かったから、お腹もさっきからずーっとペコペコだった。
叔父も「先にご飯がいいなぁあ」って横でくりかえした。
「お昼まだでしたか。そうですかぁ。私たちはさっき いただいちゃったので、では皆さんで、お昼行ってらっしゃってください。先に私たちは始めてますから・・大丈夫ですから」
それは、悪いなぁって思ったけれど、どうにもならないお腹だった。
「じゃぁ、お言葉に甘えて、そうしようか・・」
高志叔父さんもお腹が空いてるらしかった。

「これって、荷物はどこが境界線ですかねぇ・・わかれば、ちゃんと振り分けますから・・」
1番若い男の人がトラックの後ろのトビラを開けながら聞いてきた。
「ちょっと待ってくださいね」
言いながらトラックの荷台にあがると、直美も後ろからあがって荷台の中に入ってきた。
「えっとですね。ここと、こっち側が、私の分で、それから、奥は全部劉ちゃんのですから。少し間違えちゃっても平気ですから。同じマンションだし・・」
荷物を指差しながら笑顔の直美だった。
「はぃ。わかりましたから、大丈夫です。お食事行ってきてください。先にやっておきますから。思ったより、荷物少ないですねぇ」
遠慮がちに笑われていた。

僕たちは「ゆっくりでいいですから、食事戻ったら一緒にやりますから」って4人に言い残して、道の角を曲がるとファミリーレストランがあったので、そこで4人で食事を始めることにした。少し申し訳なかったけれど。

「すごーく、落ち着いた綺麗なところだね」
ちょっぴり疲れていたけれど、直美がうれしそうに話しかけてきた。
たしかに兄貴の住んでるマンションよりは、小さいマンションだったけれど、周りがゆったりとってあって緑の大きな木に囲まれていた。
「いいところねーほんとに。ちょっとビックリしちゃった」
おかーさんも気に入ったようだった。
「でも、ここって、昨日調べたんですけど、駅まで10分歩かないとみたいですよ」
静かなだけあって、駅からは少しだけ離れているようだった。小田急線の豪徳寺の駅が最寄の駅らしかった。
「10分ぐらい 歩くのがいいのよ。楽しいじゃん。夜遅くなったら、迎えに来てくれるでしょ、劉が・・帰り道楽しいもん」
勝手なことを直美は言っていた。
おかーさんは「直美ったら・・」って笑っていた。

それから、4人ともお腹が空いていたから、もりもり食べて、お茶はどうかなーって思ったけど、「ま、ゆっくりやりましょう。思ったより早く着いたから、大丈夫ですよ」って言う高志叔父さんの言葉でコーヒーと紅茶を飲んでいた。

「冷蔵庫とか、TVとか、洗濯機はこっちで買うんだけど、劉ちゃんも一緒に直美に付いてってもらっていいかしら・・」
「あ、俺もまったく なにも持ってきてないんで、明日買いに行きますから一緒に行きます。大丈夫です。早く買わないと、生活できなくなっちゃうから・・」
ほんとにそう思った。今日はTVないのかと思っただけで、どうなっちゃうんだろうって思っていた。
「明日、早起きして行こうね、劉」
うれしそうに直美ははしゃいでいた。
「さて、そろそろ、いきますか」
叔父の言葉で席を立って、マンションに向かおうことになった。

叔父と直美のおかーさんが先を歩いて、俺たちはその後ろを並んで歩いていた。
「ね、今夜、劉の部屋で寝てもいい・・ちょと、さびしいから、一人だと・・」
黒いジャケットの肘の部分を引っ張られていた。
「おかーさん、今日帰っちゃうから・・」
「う、うん」
もう、なんか、なにがなんだか・・だった。
続けて、とんでもない事を言われていた。
「おふとんは劉のでいいから・・」
もう、うわぁ・・だった。

作品名:恋の掟は春の空 作家名:森脇劉生