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神待ち少女

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 山手線は池上線よりかは混んでいたが、人がぶつかりあうほどではなかった。ずっとイヤホンをつけっぱなしだったから周りのことは気にしなかった。
 新宿に着いて、駅から出る。さすが、新宿。駅に出た瞬間、目に飛び込んできたのはたくさんの人。繁華街だねぇ。とりあえず高島屋とか小田急辺りを見に行こうかな。歩き出した。
 前からも後ろからも人がやってくる。私とすれ違ったり、追い抜いたりして、いろんな人が行き交う。
 たくさんの人が行き交っているのを背中で感じた。こんなにもたくさんの人が理由がどうであれ、同じ新宿の地を歩いている。私と同じ一日を生きている。行き交う人の背中には、その人の人生、ドラマみたいなものを感じとることができた。その個々のドラマがこの新宿にはあふれかえっている。
 私もその一部なのだが、なんだか人の波に押しつぶされそうだ。まだ自分というものが確立できていない、あるいは自分が見えていない不明瞭な状態だから。
 たくさんの人たちの中で、自分はここにいるよ、とはっきりと胸を張って言えるのか。多感な十代。学校のみんなもこんなことを考えたことがあるのかな?
 私は自分が何も持ち合わせていないことが悩みだ。取り柄がなく、誇れることがない。自分って何なんだろう?将来のことを考えるたびにこの問題が発生した。
 大学には行けなさそうだし、仕事に就くにしても何かしたいことがあるわけじゃない。高校の成績はよくない。自分は勉強に向いてないと開き直り始めてる。将来が不安でしょうがないんだよね。
 でもいろいろ先のことを悩んでもしょうがないから、一日一日を一生懸命生きれば、良い未来につながるだろうっていう風にいつもまとめてる。結局将来に向けて何にもできないことへの理由付けみたいになっちゃってるけど。今をどうするか考えるだけで精一杯なんだよ、みたいな感じ。
 やめたやめた。新宿まで来て憂鬱になってらんないや。結局いろいろ見てまわったのにほとんど記憶に残ってない。これだから人ごみは嫌い。考えすぎ。これに尽きる。
 さて、今何時だ?ケータイを見る。5時40分。もうちょっとしたらネットカフェに行って、2時間くらい時間を潰せばいいや。
 ネットカフェは新宿にはたくさんあるようだ。私がもらった無料券の店は西武新宿駅前にあるみたいだし、早速行ってみようかな。さぁ行こう。
 ゆっくり歩きすぎたせいか、時間がかかった。しかも道に迷ったし。
 さて、たどり着いた。ビルの2階にあるようだ。階段を上る。どんなところなんだろう?
 自動ドアを開いて中に入る。すぐ隣に受付があった。まぁ想像してたとおりだ。個室がたくさん。ドリンクバーがあって、セルフサービスでやるんだきっと。
「あのすいません、無料券があるんで2時間お願いします」
「はい、わかりましたぁ」
 若い男の人だった。ぱっと見チャラくて、感じが悪かった。
「部屋どこか希望ありますかぁ」
「一番端の部屋がいいです」
「すいませぇん、端はもう人入ってるんすよ」
「じゃあ、一つ手前で」
 なんか言葉遣いがむかつくし、早く終わりにしたかった。
「じゃ、部屋どうぞ、ドリンクバーは自由に使ってください」
 部屋に案内すると、さっさと受付に帰っていった。ずいぶんと楽な仕事だねぇ。

作品名:神待ち少女 作家名:ちゅん