神待ち少女
教室の扉を開ける。そして教室に入る。すると、私が教室に入るやいなや、教室にいた生徒の視線が一斉に私に向いた。私が来たとたん、教室が一瞬静まり返った。教室内はみんな、私をじっと見ていたり何人かでひそひそ話をしていた。何だ、これは。何か噂されてる?
「あら、おはよう」
私の前に中川が現れた。
「なんかみんなに注目されてるみたいね、何でかしら?」
「さあ、何でかしら」
「あくまでしらばっくれるのね。じゃあ宣言してもらおうかしら」
「何を?」
すると、中川は私の耳元で囁いた。中川はにやっと笑っている。なるほど、やはりそのことか。紫苑も知ってたんだ。しかしそんなことを自分の口からみんなの前で言うのは、恥さらしだ。
「2人で話しましょ」
そう言って、私は廊下に出た。中川はちゃんとついて来た。野次馬はついて来ないようだ。これも中川の計算なのか。
「ここなら話せるわね」
空いている教室に入った。
「じゃあ、もう1度聞くわよ」
少し間を置いた。
「颯汰と寝たんでしょ?」
はぁとため息をつく。思い出したくないことだ。それが噂になってるのはよくない。でも、完全には否定できない。
「ええ……そうよ」
「ずいぶんとあっさり言うのね。あれよこれよで相手を変えて、最後は颯汰だったわけね」
「ふ、そう思ってればいいじゃない。でもそれがなんだっていうのよ、あなたは人気者なんだから私みたいなの相手にしてるだけ時間が無駄でしょ」
「あら、何をわかったようなことを言ってるのかしら?」
私の周りをゆっくり歩いて言った。
「忠告をしようと思っただけよ。あなたのとった行動を良く思っていない人が何人もいるということ理解してほしいの」
冷徹な目ではっきりと言った。
「これが最後の忠告かもね」
人差し指を立てた。
「言いたいことはそれだけ?」
私はひるんだところや弱弱しいところを見せたくない。あくまで、毅然と振舞った。
「そんな態度でいいのかしら?」
「もう1時間目が始まるから」
そう言って私は歩き出した。
「ふふっ、それでいいのね」
中川の声に反応しないように、私はさっさと教室に戻った。