神待ち少女
「ほんと、ごめん!今日全部払わせちゃって」
両手で拝んで謝った。
「いいよいいよ、困ったときはお互い様さ」
その裏表のない笑顔に感動した。柊が友達で本当によかった。
「てか、大丈夫なの?全くお金無いんでしょ?」
「正直、どうしようかなぁっていう感じ」
「そっかぁ……」
「あんま危ないことはしたくないからね」
「うん、そのオフ会に参加っていうのはあまりよくないと思うよ」
柊には、家族が家を出たことは話してあった。さらに、一昨日のことも全て話した。雫さん、オフ会、元木晃、セキレイの会。時折目をパチクリさせて驚いていたが、真剣に聞いてくれた。
「セキレイの会っていうのに行ってみようかな……」
空の財布の中から、名刺を出す。
「こいつがその会員の1人なんだって」
「なになに、代表取締役……へぇー、すごい」
両手に名刺を持って驚く柊。
「でもイマイチ信用ならないよね、その元木晃とかいう人。話を聞いてる限りだと」
「そうなんだよねー」
両手を伸ばして、後ろにのけぞる。あぁ、かったるい。今はまだかったるいとか言ってるから、問題意識が薄いようだ。もっと、真剣に考えないと。コップの水を飲み干す。
「しょうがないなぁ、悩める子羊を見過ごすわけにはいかないね」
「え?」
柊はコーヒーカップに砂糖を入れて、スプーンで混ぜながら言った。
「友達が困っているんだから、ここは一肌脱ごうじゃないか」
混ぜてるスプーンを置いて、コーヒーを味わう。
「服脱ぐの?」
「あたしが脱いだところで、陸上部で鍛えられた凹凸のない引き締まった体に興味ないでしょ?」
「ごめん、調子に乗った」
柊と一緒にいると、落ち着くというか気持ちが緩むというのか、ふざけてしまうことがある。真剣な話をしているときも。悪い癖だ。
「で、そんな話はさておき、力になるよ」
柊は私のほうをちゃんと見て言った。
「ありがと、気持ちだけでも嬉しいよ」
「いやいやいや、気持ちだけで終わりにしないでよ」
「だって、そんな、どうするって言うのさ」
「うーん、そうだねぇ……」
柊は腕組みをしながら考えている。