神待ち少女
「おつかれー、楽しかった!」
満足そうに中川はコートから出た。そして、授業は終わった。まぁたまには運動したほうがいいよね。更衣室に向かう。
着替えて、教室に戻る。あぁ、体育の後の授業は眠くなる。私は汗を拭いて、机に突っ伏した。
次の授業は、気づいたら終わってた。何度か起きたけど、無理だった。何はともあれやっと一日終わった。久しぶりの学校は本当に長い。
帰りのホームルームが終わって、私は席を立った。
「ばいばい」
楓と別れて、教室を出た。放課後は柊との約束があるからね、楽しみでしょうがない。4組の教室の前で待機。
「七海!」
教室の中をちらっと見て、目が合った。宮村胡桃。4組のアイドルと共に、学年のアイドルだ。おしとやかで超絶美人、吹奏楽部ではサックスを担当、次期部長候補である。柊と仲良しで、その縁で知り合った。私とも仲がいい。
「胡桃!元気?」
「元気にしてるよ。七海こそ元気なの?美桜が心配してたよ」
「ちょっといろいろあってね。あ、そうだ、今日放課後柊と遊ぶんだけど、胡桃は暇?」
「ごめん、部活が忙しくて抜けられないの」
「そっか、それはしょうがないね」
「ほんとごめんね、今度話聞かせてね。相談も聞くから」
やさしい子だ。屈託のない笑顔を見せてくれた。
「うん、ありがと。ところで、柊は?」
「美桜は駿くんと話してる。たぶん部活の話」
「いや、いちゃいちゃしてるんでしょ」
そう言って、教室を見渡す。
「仲がいいのはいいことだよ」
「でも、全然カップルって感じしないんだよね。なんか友達同士みたい」
2人で楽しそうに話してるのを見つけた。
稲葉駿。柊と同じ陸上部で、長距離をやっている。自由奔放でマイペースな性格で、それが顔にも出ている。
「あ、ナナ!ちょっと待ってね」
こっちに気づいたようだ。私は柊の元へ歩み寄った。
「駿くん、柊と楽しそうなところ、ごめんね」
「本当だよ、もう少し美桜と一緒にいたかったな、なんてね」
そう言っておどけて見せる駿くん。
「あらあら仲のいいことね」
柊のほうを見る。
「もうナナったら!」
「朝倉はさすがだな」
ははっと駿くんは笑った。
「じゃあまた明日ね、駿くん」
柊は軽く手を振る。べーっと舌を出す駿くん。
「じゃあね、くるみん」
「ばいばい、また今度誘ってね」
私も2人に別れを言って、教室を出た。
「お待たせしたかな?」
歩きながら私に尋ねてきた。
「いや別に、胡桃と駿くんに会えたし」
「それならよかった、どこ行く?」
「カラオケ行きたい」
「いいね、あとプリも撮りたい」
「じゃあどうする?」
「んー、じゃあ新宿にしない?帰り道だし」
新宿。一瞬頭の中で引っ掛かって次の言葉に詰まった。
「いいよ」
特に気にすることはないわ、過敏になりすぎ。これじゃ朝と何も変わってないじゃない。
「じゃあ決まりね、早く行こ」
柊が楽しそうな顔をしていたので、私の顔も自然と綻んだ。