神待ち少女
「早く食えよ」
「食べながらでも話はできるわ」
2人は屋上に来ていた。幸い誰もいなかった。
「じゃあ、単刀直入に聞くぞ」
「どうぞ」
クロワッサンを手に持ちながら答えた。
「颯汰とは別れたのか?」
やはり、その話か。クロワッサンを一気に口に入れた。
「ん、颯汰から聞いたの?」
クロワッサンを飲み込んで答えた。
「いや、あいつは特に何も言ってなかった」
「じゃあ、何で?」
「穂乃香が」
「ち、あのイタチ娘が」
舌打ちをした。あの女、よっぽど私が嫌いなんだな。
「まぁ、一応確かめてみたかった」
「それで、あとは?」
「あとはって……どうして別れたの?」
「それは、あいつが気に食わなかったから」
「気に食わなかった?」
「詳細が知りたいの?」
「できれば」
「なんなら、今度は私の質問に答えてよ。そしたら教えてあげる」
紫苑は黙った。おそらく、私がする質問が想像できたのだろう。悩んでいるのか。
「いいよ」
小さな声で短く言った。
「中川とは、いつから付き合ってるの?」
「お前と別れてから、一ヶ月後くらいから」
「一ヶ月も経ってないでしょ」
「なんだ知ってるのか」
「颯汰から聞いた」
「そっか、それであと何が聞きたい?」
また少し沈黙。これを私は聞きたかったのに、スムーズに言葉にできなかった。
「なんで、中川なの?」
声が少し震えているのがわかった。
「それは……」