神待ち少女
早く終わって、と思って3、4時間目を過ごした。家庭科と倫理とか、つまらない教科が続いたから、ひどく長く感じた。
さて、昼休みだ。お昼は持ってきてないから、我慢するか、あいつに奢ってもらうか。私は立ち上がって、教室を出た。
1組は階の一番端に位置している。たったったと廊下を歩く。昼休み中の廊下は騒がしい。通り過ぎた教室から、楽しそうにお昼を食べている生徒を見た。それを横目に見て、廊下を歩く私1人。
1組の教室の扉に手をかける。がらっと扉を開ける。中に入ると目立つので、誰かに紫苑を呼んでもらおう。
「ねぇ、太一」
「ん、おぉ、朝倉か。どうした?」
山田太一。サッカー部のムードメーカー。言い方を変えれば、ただのひょうきん者かな。
「ちょっと、紫苑に用事が」
「え、紫苑?何で?」
「あ、それは……」
「いや、いいよ。ごめんな」
太一は、紫苑と私の関係についてだいたい知っている。だから、少し私が訪ねてきたのを疑問に思ったのかもしれない。素直に顔に出ていた。わかりやすい奴だ。
「おーい、紫苑。朝倉が」
「ん、はーい」
紫苑は数人の男友達と席を囲んでお昼を食べていた。
「悪いな、わざわざ呼び出して」
「いいわよ、手短に終わらせましょ」
「まぁ、そう言うなって」
紫苑は教室を出た。
「2人だけで話そう」
「どこに行くの?」
「どこにしようか、屋上か体育館裏とか」
「それより、私お腹すいた。なんか奢って」
「何も食べてないの?しょうがないなぁ」
「購買のクロワッサンとおにぎりでいいわよ」
私は、手を差し出した。
「……思ったより、元気そうで」
そう言って、500円玉を差し出した。
「ふふっ、サンキュー」
軽く微笑んで見せた。500円もらえるとは思わなかった。早速買いに行こう。
下の階にある購買は、思ったとおり混んでいた。
「混んでるな、早くしないと昼休み終わっちゃうな」
「しょうがないわね、はい、買ってきて」
500円玉を返した。
「はぁ?」
「あんたの方が人脈広いでしょ」
「ったく、なんか強気に出てるな」
髪を掻きながら、うんざりした様子で紫苑は言った。
「どっちが?」
小首をかしげて、言い放った。
「わかったわかった、買ってくるよ」
そう言って、紫苑は列の前に行って、横入りをした。おそらく知り合いなのだろう。
「はい、これでいいだろ」
買ってきたものを私に差し出す。
「あと、飲み物」
それを聞いて紫苑は苦笑した。