神待ち少女
1時間目と同様に、適当に過ごしたら、すぐに終わった。机に突っ伏したまま、休み時間が終わるのを待つ。ホームルームがあるが、どうでもいい。
ふと、人が近づいてくるのを感じた。ゆっくり、顔を上げる。
「どうした。元気ないの?」
彼の名前は、杉下柚希。彼も中川と同じく2年連続で同じクラスになった。彼は、目立った存在ではないけど、好青年といった感じで、好感を持てる。
「ん、別になんにもない。ありがと」
「そう?まぁ無理はしないほうがいいよ」
「そうだね」
短いやりとりだったが、気に掛けてもらったことは悪くはなかった。
3時間目も早く終わってくれないかなぁ……。
がらっと教室の扉が開いて、誰かが入ってきた。そして周りを見渡し、私の席に近づく。まったく、久しぶりの学校とはいえ、千客万来だ。
「おぉ、久しぶり」
「久しぶり」
彼は、飯沼紫苑。1組で、背が高くてバスケ部のエース。そして、私の……。
「ちょっと話したいんだけど、昼休みいいか?」
「何を今更?」
「ちょっとだけでいいんだ。お互い言いたいことがあるだろ」
「私はもういいわ。だって関係ないもの」
「そういう風に言うのもわかるがさ。とにかく、昼休みに1組に来てくれないか?」
「あなたが来なさいよ」
「いや、ちょっと5組には……」
そう言って、視線を外した。その視線の向こうには、中川がいた。
「いいわよ、私もあのイタチ娘にきゃあきゃあ言われるのはまっぴらだからね」
「イタチ娘はひどいだろ」
「そう?ぴったりだと思うけど」
「まぁいい。とにかく昼休みいいな?」
「了解」
渋々承諾してしまった。まぁいいか。どんな感じで切り出すか、見物だわ。……なんて、強がってるのかな、私。
約束を交わすと、彼はそそくさと教室から出て行った。中川に気づかれたくないからだろう。
本当に久しぶりだわ、紫苑。いったい、どんな気分なのかしら?私は、やはり複雑な気分だわ。なんとも言えない。言いたいことがあったとしても、面と向かうと萎えてしまう気がする。なんとなく、そんな気がする。あぁ、かったるい。再び机に突っ伏した。