神待ち少女
疲れていたので、深い眠りになるかと思ったが、思ったより早く起きてしまった。
7時10分。彼はすでに起きていた。
「おはよう、ぐっすり眠れたかい?」
「まぁまぁです」
「そうか。もう帰るかい?」
「あ、はい…あと少ししてから…」
「なら、今渡すよ。お金に困っているんでしょ?」
そう言って、彼はお札を差し出してきた。もらうべきか…いやもらっちゃだめだ!もらったら…この状況じゃ、売春されたという認識が生まれるだろう。それは、気持ち的によくない。
「別にいいです。気持ちだけいただきます」
「いいのかい?それならそれでいいけど…」
私は帰る準備をした。洗面所で顔を洗い、歯を磨いて、髪をとかす。そして、着替えた。
「じゃあもう行きます」
「うん、気をつけて。多分もう会うことはないね」
本当最後まで読めない男だ。私は彼に別れを告げて、ホテルを出た。
新宿の街は眠っていた。人通りはそんなに多くない。私は早歩きで駅に向かう。
電車に乗ってからは、あまり覚えていない。よく家までたどり着いたものだ。体は、思った以上に疲れていたようだ。私は、家のドアを開けて、すぐにベッドにダイブしていた。
起きたときには、もう日が暮れそうだった。ずいぶんとよく寝た。やはり家のほうがよく眠れる。鏡を見たら、ひどい顔をしていた。まだ少し酔いが残っているようだ。
麦茶を飲んで一息つく。昨日の出来事を整理してみよう。いろいろなことがあったからね。
お金がなかったので、女性無料のオフ会に参加しに新宿へ。新宿に着いてから、時間つぶしに満喫へ。そこで、神待ち少女、後藤雫と出会う。そして、神待ちを知る。
「あ、そういえば」
携帯を開いて、電話帳を見る。確かに、後藤雫の名前があった。
「実際、もう会わないかも…」
一日経ってからよく考えてみた。確かにそう思ったが、後悔しそうだったので、消さなかった。どこか彼女について、引っかかる部分が頭の中にあるのかもしれない。
それで、満喫を出た後、オフ会へ。オフ会ではいろいろな人に出会った。明美さん、美香さん、弘樹さん、副管理人。そして、元木晃。
最後の人だけ、呼び捨てでフルネームにしたのは、よく覚えているからだ。他の人は、少しおぼろげな記憶だ。
元木晃にだけは本当のことを言った。そしたら、ここにいてはいけないと言って、ホテルに連れてかれた。そこで、犯されると思ったが、趣味の話をして、軽いキスで済んだ。でも別にいやらしくなかった。
彼の言ったとおり、私は運がよかったのかもしれない。私は甘く見てた。今思えば、よく無事に帰ってこられたと思う。一歩間違えれば、大変なことになっていたかもしれない。
とにかく、今後はもっと気をつけよう。まだ今月は長い。残りの日を無事に過ごせるように――。