神待ち少女
あまりに急な展開で、私は何の抵抗もできなかった。腕をつかまれ、彼が行く道についていかざるをを得なかった。
路地裏に入って、ネオンの明かりが目立つようになった。
「え、ここに入るんですか?」
なんとなくその不安があったが、一応聞いてみた。
「初めてで緊張してるのかい?大丈夫、乱暴はしないよ」
「すいません、私帰ります!」
私は危険を感じて、その場から逃げようとした。
「帰るって、どこに帰るんだい?言っただろ?終電はもうないし、こんなとこうろついていたら、補導されるか、危ない奴らに声掛けられるだけさ」
「それでもいいです!」
「まったく、少し落ち着いたらどうだい?」
彼は掴んだ腕を放そうとしなかった。
「ほら、おいで」
「ん…」
私は何も言い返せなかった。言っても無駄だ…肩を落して、オフ会に参加したことを後悔した。
2人はホテルの中に入った。これが、ホテル、とかいう感想はない。初めてではないから。確か……颯汰と行ったんだ。あいつ、ろくな奴じゃなかったな。
上の画面を見て彼は部屋を決めている。
「どこがいい?」
「どこでも」
私はそっぽを向いた。
「じゃあ、ここにするよ」
鍵を受け取って、再び彼は私の腕を引いて歩き出した。
「さぁ、どうぞ」
扉を開けて、私を先に部屋に入れた。
「お腹空いているかい?缶詰ならあるけど…」
「何のつもりですか?」
「おいおい、そんなに警戒しなくても。って無理だよね」
彼はベットの上に座った。
「別にセックスは求めてない。ただ、僕は君のことが気に入っただけだ」
「と言いますと?」
「身寄りのない子だから情が移った、というのもあながち間違いではないけど、正解ではないかな。とにかく、君のことが気に入った」
「それで、私をホテルに連れ込んで何を?」
「2人っきりになりたかったんだろうな。僕は気分しだいで生きてる、きまぐれ者だからね。たまたま、今日はセックスをする気がなかっただけで、他の日に出会っていたらやる気満々だったかもしれないし…まぁ何とでも言える」
「そうですか」
不思議だ。男なんて性欲の塊だと思ってたけど…。特に今日は、雫さんの話を聞いた後だし。この男、読めない。
「シャワー浴びてきていいですか?」
「いいよ、バスローブ出しとくよ」
私はバスルームに入る。