神待ち少女
私はいつの間にか…彼に全てを話していた。彼は、ただただ頷いている。
「そっか…それは大変だったね。苦労してるんだね…」
彼は下を向いて私に言った。
「そうですね…確かに大変でした。今は、今後どうしようかが、悩みどころです…」
「まぁ苦労した人は、その分強くなれるからね。未来はきっといいことあるよ」
彼は顔を上げて、励ますように言った。
「そうだといいですね」
私はグラスを飲み干した。
「まだ君は若いからどうにでもなるよ。まだ20歳じゃないか。これからが本当の人生と言っても過言ではないよ」
「あ、本当は、20歳じゃないんです…」
ここまで話した以上、彼には嘘はつきたくなかった。本当のことを言おう。
「私、16歳なんです」
「なんだって?16歳!?それは驚いた…。確かに両親が出て行ったのが、高1のときって言ってたから、20歳じゃちょっとおかしいな。でも本当に16歳とは…」
彼はとても驚いていた。ちらっと私を見て、怪訝そうな顔をした。
「はい…嘘ついてごめんなさい」
私は申し訳なさそうに言った。
「…嘘ついたことは、別にいいけど…未成年なら、ここにいるのはよくないよ」
「え?」
確かにそうかもしれないが、今まで普通に話していていきなりそんなことを言われるとは…全く思わなかった。思わず聞き返してしまった。
「お酒も結構飲んだよね?未成年なのに。しかももう深夜で、終電もないから帰れない。高校生じゃ補導されるよ」
彼は顔を再び上げた。すると、彼の私を見る目つきが変わっていた。
「とりあえず、この店から出よう」
彼は立ち上がった。
「え!?なんですか急に!?」
私は動揺した。
「未成年がこんなとこにいちゃ危ないよ。だって、夜が明けるまでいることになるんだよ」
「そうですけど、かと言ってどこに行くんですか?」
彼は私の手をつかんだ。嫌な予感がする。
「大丈夫、警察に突き出すわけじゃないから」
彼は歩き出した。
「じゃ、じゃあどこに?」
「行けばわかるよ」
彼は副管理人に一言声をかけ、帰ると言ってから店を出た。そして、エレベーターに乗って外に出た。