神待ち少女
中ではすでに盛り上がっていた。カラオケを歌っていたり、カクテルを飲んでいたりと。
とりあえず席に座ることにしよう。私はカラオケで盛り上がっている方は避けて、手前の方のテーブルに座った。
「どうもー、失礼します」
和やかな感じだったので、そのムードを崩さないよう明るい感じでいった。
「こんばんはー」
何人かいたうちのどの人が返してくれたかわからなかったが、笑ってごまかした。
座って一息ついて、ふと周りを見渡した。そういえば明美さんと美香さん、そして弘樹さんはどこに行ったのだろう?
3人はカラオケボックスに近いほうのテーブルに座っていて、盛り上がっていた。私が見たときは弘樹さんがマイクを持って歌っていて、美香さんがマラカスを振っていた。私の入る余地はなさそうだ。
「ふぅ」
一息ついて、椅子に深く腰掛ける。
「疲れているのかな?」
隣の人が話しかけてきた。男性だ。20代後半か30代くらいだろう。髪は長めで、黒縁のメガネを掛けている。
「あ、いえ、大丈夫です」
再び座りなおして、彼のほうを向く。
「君、若いね。いくつ?」
「何歳に見えます?」
ふざけて聞いてみた。私もちょっと酔ってるのかな?
「そうだねぇ。学生さんかなぁ、20代前半くらいかな。でも10代にも見えるなぁ」
一瞬ドキっとしたが、顔に出さないようにした。
「よく幼いって言われるんですよ。こう見えて20です。れっきとした大人ですよ」
「そうか。まぁ女の子は見た目じゃわからないからね」
私は、ははっと笑ってごまかした。
「じゃあ僕はいくつに見えるかな?」
「そうですね、27歳くらいですかねぇ」
「お、当てにいったね!でもハズレ、29歳だよ。ギリギリの20代」
そう言ってメガネを外した。どうやら伊達メガネのようだ。
「どうだい、目が細いでしょ?だからメガネを掛ければちょっとは変わるかなぁと思ってね」
「確かに、メガネ掛けたほうがいいですね。かっこいいですよ」
「それはどうも」
彼は再びメガネを掛けて、腕を組んだ。
「なんかカクテル飲む?」
テーブルの上のメニューを差し出す。
「じゃあ、カシスオレンジを」
無難なところを選んでみた。あれは、確かちょっと濃厚なジュースみたいなものだ。
「カシスオレンジね、じゃあ僕はウーロンハイでも飲もうかな」
そう言って、バーのテーブルに向かい、頼みに行った。
数分後、両手にグラスを持って席に帰ってきた。
「はい、カシスオレンジ」
ストローの入ったグラスを私に差し出す。
「どうもです」
グラスを両手で受け取る。