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神待ち少女

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「これからどこに行くんですか?」
 私はエキセントリック…、いや副管理人に尋ねた。
「バーだよ。まだまだ夜はこれからだからね。カラオケボックスもついてるし、カクテルサワー飲み放題だよ。こっからすぐ近くだから」
 彼は歩きながらも、丁寧に教えてくれた。彼は大柄で背が高いので、私の目線だと、どうもヤンキースのTシャツに目がいってしまう。そしてその首には携帯が3台ぶらさがっていた。
「なぜ携帯を3台も?」
 私は首元を指差して尋ねてみた。
「あぁ、これ?こういう仕事をしてると、いろいろ必要になってくるんだよ」
 そう言って、3台の携帯を手に取る。
「よかったら、連絡先教えてくれない?オフ会の情報教えるよ」
 3台のうちの1つの携帯を開いて、私の方に向ける。
「あ、はい。どうもです」
 一瞬躊躇しそうになったが、特に断る理由が見つからなかった。
「はいどうも!そろそろ着くからね」
 ふと周りを見ると、少し暗いところにいた。路地裏だ。ホテルがある。バーはこういうところにあるものなの?バーでいい感じに酔って、その後ホテルに直行という感じなのかな。
 そんなことを考えたが、普通に路地裏は通り過ぎて行った。どこまで行くのだろう。
「七海〜」
 後ろから美香さんの呼ぶ声がした。彼女らは3人で歩いていたので、1人で歩いていた私とだいぶ離れていた。
「はーい」
 軽く返事をして、引き返した。
「そろそろ着くみたいですね」
「そうね、確か歌舞伎花道通り沿いの店だったわ。あそこ、少し狭いけどまあまあオシャレだった気がする」
 私は3人に合わせて歩いた。美香さんと明美さんは喋り続け、弘樹さんは笑みを浮かべて相槌をうっていた。
 私たちは歌舞伎花道通りに出たら、右に曲がった。そして少し進んだらたどり着いた。看板を見ると、地下2階にバーがあるみたいだ。
「あたしたち一番遅かったから、もうみんな下にいるだろうね」
 そんなことを言いながら、エレベーターを待つ。
 エレベーターがきて乗り込んだ。少し小さめのエレベーターだった。4人はエレベーターに乗って、端になった私がボタンを押した。
 数回の瞬きのあとで、エレベーターは止まった。私は開のボタンを押して、3人を先に降りさせた。このくらいの気遣いは自然とできる。
 これが、バーなんだ。人生初めてのバーにこんな形で来ることになるとは。思ったより、普通だ。少し明かりが暗めなだけだ。
「あ、こっちです」
 店の前に立っていた副管理人が手を振っている。
「さぁ、どうぞどうぞ」

作品名:神待ち少女 作家名:ちゅん