神待ち少女
「こんばんはー」
私が声を出したら、何人かが私の方を見て、会釈を返してくれた。まぁつかみはこんなものかな。
「失礼します」
私は空いているところに腰を下ろした。奥に詰めてもらって、端のほうに座った。
「ふぅ」
座って一息をつく。ふと前に座っている女性と目が合った。明るめのベージュ系で、ウェーブがかかったロングの髪だった。おしゃれな感じで、20代前半ぐらいだろう。
「はじめまして。今日もお疲れ様です」
そう言って、私に微笑みかけた。まずこの人から話してみようか。
「どうも、お疲れ様です。いやー盛り上がってますね」
「そうですね。いい感じに人が集まってきましたし。おいくつですか?」
「20歳です。あなたは?」
さらっと4歳もサバを読んだが、向こうはまったく疑う様子はなかった。
「割と近いですね!私は22歳です」
22歳か。私もこんな大人になるのかな。
「20歳ってことは、学生ですね」
「そうです。勉強そっちのけで遊んじゃってます。あなたは、もう社会人ですか」
とりあえず大学生にありそうなことを言ってみた。おそらく大学生にはなれないけど。
「はい。私、アクセのお店で働いてるんですよ」
アクセか、かわいらしい。見た目と合ってる気がする。
「ところで、お名前は?」
「あぁ、朝倉七海です」
「七海さん、ですか、いい名前ですね。私は、宮川明美です」
「明美さん、ですね。私の方が年下なんで、そんなに気を遣わなくても大丈夫ですよ」
「お気遣いどうも。あまりこういう場には慣れてなくて、堅い感じになっちゃうんですよね。七海さんは?」
「私は、今日が初めてなんですよ。オフ会というのに参加するの」
そう言うと、彼女は目をパチクリさせて驚いた。
「そうなんですか?全然そうは見えないです。なんかこう、初めてにしては落ち着いているし、受け答えもしっかりしてるし、しっかりしてますよ!」
うーん、なんかすごい褒められている。とりあえず『そんなことないですよ』みたいな感じで謙遜するように、頭を掻いて、髪を指で分けた。
「ねぇねぇ、彼女オフ会に参加するの初めてなんだって」
明美さんは隣の女性の肩をつついて、話しかけた。すると、向こうで話していた彼女は私のほうを向いた。
「へぇーそんなんだ。よろしく!私は、美香よ」
明美さんと違って、この場に慣れきっているようだ。見た目も、キャバ嬢みたいな巻き髪、たれめのアイメイクにきらびやかな服装。ノリがよくて、軽い感じだ。
「ずいぶんとかわいらしい子ね。なんでこのオフ会に来たの?他の合コンみたいなとこだったら、絶対にお持ち帰りされるのにっ!」
「ちょっと!彼女困ってるよ」
「いえ、大丈夫です。明るくていいと思います。こういう盛り上げ役は必要かと」
「あたしが盛り上げ役?ははっ、そうかなぁ。まぁよくうるさいって言われるけどね!」
見たまんまの性格のようだ。私の学校でもこういうのは何人かいる。あまり絡まないけど。
「じゃあさ、とりあえず乾杯しようか。今宵の夜を楽しめるように!」
美香さんは高々とグラスを持ち上げて言った。そういえば私、飲み物頼んでなかった。たしか副管理人に頼むんだっけ。
「すいませーん。飲み物頼んでいいですか?」
副管理人がいる方に向かって、声を出した。そうすると、副管理人はすぐ私の元にやってきた。
「はいはい。七海さんね。何にする?」
「じゃあ、ウーロンハイで」
「OK。すぐ持ってくるね」
酒は結構飲み慣れている。一時期は結構誘われた。柊は案外飲めないんだよね。
「はい、どうぞ!」
無料にしては、豪快な大ジョッキで運んできた。せっかくだしたくさん飲もうかな。
「じゃあ、かんぱーい!」
美香さんと私のグラスが音をたてる。次いで、明美さんと。その後もしばらくはこの三人で話していた。そして少しづつ打ち解けていった。