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神待ち少女

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「この友達にはお世話になったね。いろいろ教えてくれたし、比較的安全な『神様』を紹介してくれた。最近は会わないけど、どうしてるかな。まぁこんな感じで神待ちを知ったわけ。最初の頃はバイトがつらくてよくやってた。今までいろんな『神様』と神待ち少女に会ったね。でももうやめた。さすがによくないし、真っ当に生きるようにしたいと思うしね。そういった意味では、あたしは元神待ち少女っていえるのかな」
 そして、さっきまでの暗い顔とは違い、明るい顔でこう言った。
「あのね、あたし大学に行きたいんだよね」
 いつの間にか私は泣いていた。それは不憫だね、というくらいの生半可な同情ではなく、本当にかわいそうだと思ったからだ。彼女の気持ちを考えてみて、自分に置き換えてみて、そうやっていくうちに涙がこぼれた。こんなにも健気で、かわいそうで…。
「ん、泣いてるの?せっかくの顔が台無しよ。ごめんね、湿っぽくなっちゃって」
「い、いえ。大丈夫です…」
 彼女優しい気遣いに私はまた涙した。こんないい人なのに…。どうして。
「まったく。ほら顔をあげて。これじゃ続き話せそうにないね。まだ少しあるんだけどね。まぁだいたいのことは話したつもりだけど。とにかくそんなこんなで家出して、いろいろあって今に至るわけ。というか、時間大丈夫?結構語っちゃったけど…」
「は、はい?」
 涙を拭って時計を見た。8時を過ぎていた。ずいぶんと濃い時間だった。
「そうですね、そろそろここを出ようかと。実はオフ会に参加するんです」
「オフ会?コンパでもするの?意外と遊び人?」
 にやっとして彼女は言う。少し意地悪く。
「違いますよ!実を言うと、このオフ会は女性が無料なんですよ。最近金欠でしょうがなく…」
「なるほど。まぁ気をつけようね。知らない人と接するのは思った以上に多くの危険がはらんでいるから」
「はい、気をつけます。いろいろとありがとうございました」
 軽くお辞儀をした。
「いやいや、あたしが一方的に話をしてただけじゃない。むしろあたしが礼を言わなきゃ。話を聞いてくれた上にもらい泣きしてくれて、本当にありがとう」
 彼女はまた私の手をとって、握手をした。
「朝倉七海。また会ったときはあなたの話が聞きたいな」
「はい、またお会いできるといいですね」
 本心だった。私は彼女を信じた。また会いたい。心のそこからそう思った。
「あ、よかったら連絡先教えてくれませんか?」
 自分の携帯を差し出す。
「いいの?じゃ送るよ」
 赤外線受信でお互いの連絡先を交換した。これでよし。
「オフ会ではあまり安易に連絡先を交換しちゃダメよ」
「わかってます。では」
 バイバイと手を振って、私は部屋から出た。余韻を噛みしめるようにゆっくり歩いて外に出た。店を出てからも彼女の顔が残像として頭に残っていた。

作品名:神待ち少女 作家名:ちゅん