神待ち少女
「う〜ん、あれは忘れないわ。みんな自分勝手すぎるよね。あたし何なの?って感じ。母にとってはあたしは1000万。大金でできた子。父にとってはかわいいお人形さん。叔父さんにとっては父を陥れるキーアイテム。みんなあたしに優しくしてくれない…。誰からも愛情を感じなかった…」
ここまで不運なことがあるのか…。彼女は何も悪いことしていないのに。
「あたしはこれを機に家を出た。父に一言も言わずに。なんか何もかもがめんどうになってね。とりあえずリセットしてみようと思った。最近のニュースで見たけど、叔父さんは死んだみたい。たぶん父に殺されたんだと思う。父はなんだかんだ言ってぬかりがない。父はあたしを探さずに、また新しい子を見つけているだろうね」
なんて男だ…。豊田正憲、なんでもありだな。今も社長をしているのだろうか。こんな男が金持ちなんて世の中おかしいよ!
「家出してから少しの間は友達の家に行ったりしたんだけど、さすがにずっとはいられなかった。路頭に迷ったよ。家から結構お金を持ってきていたとはいえ、一時期本当にホームレスだった。なんとか日雇いのバイトを探して、そのためにあちこちを回ったりしてた。たいした給料じゃなかったけどね」
その時期に普通に暮らしてたら高校生活を楽しんでいただろう。学校にも行けず、毎日当てもなく歩き続ける。想像しただけでつらい。
「そんなある日、昔の友達から電話がきたの」
それは世間では春がやってくる気配のする3月頃のことだった。家出して一年が経とうとしていた。
行っていると、彼女は初めて『神様』に会った。友達は中学生の頃はおとなしかったが、高校生になってからだんだん派手になって、冬休みに入る頃にはほとんど家に帰っていなかった。友達曰く、『神待ち』は小遣い稼ぎらしい。彼女が家出しているのを知っていて呼んだそうだ。
「この人がさぁ、もう一人かわいい子がほしいっていうから呼んだの。この人マジで神だよ。めっちゃお金持ちなの。ここの部屋だってすごく高いんだよ。ほら、夜景が綺麗」
『神様』は煙草を吸いながら、足を組んで座っていた。かっこいい男だった。
「まさかこんなにかわいい子が来るとは思わなかった!今日ははずむよ」
「本当!?やったね!雫!」
友達は楽しそうだった。彼女にはまったく理解ができなかった。ふと父との記憶が頭に浮かんだが、振り払った。
「さぁ、おいで」
彼はバスローブを脱いで、ベットに座った。
「じゃ『神様』を楽しませてあげよ!」
これが初めての『神待ち』だった。