神待ち少女
「あれは衝撃的だった。口では言い尽くせないなぁ。まだ幼かったから、何もわからなかった分余計に混乱してたと思う」
私は何も言えなかった。養子とはいえ、娘にそんなことをしようと思うのか。虐待だ…。
「まぁ当然そのときだけでは終わらなかったよ。その後も何度もそんなことがあった。どんどん過激なことをされた。苦しかったなぁ」
彼女は遠くを見て言った。昔の苦しみを思い出しているのだろうか。悲しそうな目をしているわけではなかった。ただ、その目には輝きが全くなかった。普通ありえないことだが、白目の部分も黒く見えた。それは内面の黒い部分を映し出しているようだった。
黒い…黒い…黒い。吸い込まれそうだ。
「すごく沈んでたし、悩んだね。でも、自分は養子だし、本当の家族じゃないから…。そんな風に思ってた。で、そんなある日気づいたんだよ。『苦しいと思ってるから苦しいんだ』って。いつも『嫌だ嫌だ』って思ってるから辛いんじゃないかなって…。だから、楽しんでやってみたらどうかなって、ね」
「楽しむ…」
なんて健気なんだ…。そう思うが、精神が歪んでしまったともいえる気がする。虐待を楽しめるものかっ。でもそうするしか道はなかったのかもと思うと…。
その日の彼女は今までとまったく違った。いつもは父に呼ばれて部屋に行くのだが、この日は自分から部屋に行った。そして、自分から服を脱いだ。
「お父様、遊びましょ!」
甘えた声でそう言った。
「おぉ、今日は一段と元気だな!どれどれ」
父はいつものように彼女を弄んだ。彼女も積極的に奉仕した。とても、笑顔で。
「うまくなったな、雫。気持ちがいい」
「そうでしょ?もっと気持ちよくしてあげるんだから」
父の顔が綻ぶ。彼女の顔は口元は笑っているが、目は笑っていなかった。
「本当にたまらんなぁ。何も考えられなくなりそうだ」
それを聞いて彼女は、ぞくっとした。あの威厳ある社長である父が見せた油断だらけの表情…。男の人って…。そんなことが頭をよぎったが、彼女は手を抜かなかった。
「いやー、今日は本当に良かった。ほら、お小遣いだ。いつもより多めにあげよう。といってもいつも受け取らないが、いるか?」
「もちろん」
ほんの一瞬だけ、ためらいがあったが先に口が動いていた。
「頂きますわ、お父様」
それが、初めてもらった体の代償だった。
それが、今の原点。
それが、彼女の分岐点。