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神待ち少女

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 後藤雫は9歳のときにある家族に養子に出された。金持ちの家族だった。前の家とは比べものにならないくらい大きな家で、家にはたくさんのお手伝いの人がいた。
「前の家族は私をおいていったら、行方がわからなくなったんだって。まぁすごく貧乏だったしね。しかも母親だけ。家に連れて行かれたとき、母親に『すぐに帰ってくるからここでお留守番しててね』って言われたのを未だに覚えてるよ。ものの見事に騙されたね」
 それはかわいそうだ。せめて娘だけは苦労させたくないという気持ちからの選択だと思うが。やっぱり本当の家族と暮らすのが一番だよね。でもうちの父親はろくでもなかったから出て行っても仕方ないか。
 新しい家での暮らしは前の生活を忘れさせるぐらい裕福だった。欲しいものはすぐ手に入るし、そもそも家に何でも揃っている。食事は贅沢三昧。ここのうちに来てよかった、なんて思ったりもしたそうだ。
「あれはすごい家だった。家の主が有名な会社の社長さんなんだよ。社長なんてすごいことだよね。なんか遠い存在に感じたよ。格が違うって感じで」
 そこの家族は子どもがいなかったようだ。でも父親が娘を欲しがっていて、後藤雫に白羽の矢が立ったみたい。そのときはまだどういう経緯で彼女の母親と知り合ったのかわからなかった。
「父親はあまり家にいなくて、母親はあたしの面倒を全然見てくれなかった。あたしの世話はお手伝いの人にまかせっきりだった。まぁ特に不満はなかったけど」
 家には他に、父親の兄弟の家族、母親の兄弟の家族が一緒に住んでいた。数え上げればたくさんいるが、広い家で、あまり家族みんなが顔を合わせることはなかったという。
「今思えば、あんまり家族としての思い出はなかったね。子どもを欲しがっていた割にそんなにかまってもらえなかった。忙しくてそんな場合じゃなかったんだろうけどさ」
 まぁそんなこんなで彼女は新しい生活に慣れていった。新しい家族とも徐々に打ち解けていった。顔を合わせれば普通に話せるようになった。かまってもらえないのは最初は寂しかったけど、その頃にはもう慣れてた。
 そんなある日、父親が久しぶりに帰ってきた。父は一ヶ月に4,5回帰ってくるときもあれば、2ヶ月帰ってこないときもあった。でも彼女の誕生日には必ず帰ってきた。その日は彼女の12歳の誕生日だった。
 父は帰ってくるとすぐに、誕生日を祝ってくれた。誕生日を祝ってもらうのはやっぱり嬉しかった。その日は、父が帰ってきて、パーティをやるのをとても心待ちにしていたのだ。
 楽しかった時間はあっという間に終わり、自分の部屋に戻った。すると、父が彼女の部屋にやってきた。自分の部屋に来いとのことだった。特に用件を言わなかったが、誕生日で上機嫌だった彼女は全く気にしなかった。
「今日は楽しかった、って感じで1日終わりだと思ったら、急に父親が部屋に来てくれと言ってきたわけだよ。今思うとあの時の父親の顔はいつもと少し違った。いつもはだいたい口が真一文字に結ばれ、目が鋭くて、緊張感があって威厳が感じられたけど、その時は口がゆるんでいて、瞬きが多く、あたしをまじまじと見つめてた」
 父の部屋はあまり入ったことがなかった。何回かお手伝いの人を通して部屋に呼ばれたことはあった。その時は大抵お説教が多い。だが今回のように父自らが彼女の部屋に迎えにきたのは初めてだった。
 廊下を歩いていくうちに少し考えてみた。まぁお説教ではないだろうから、たぶん良いことだろう。そう思っていた。
 そんなことを考えているうちに、部屋に招き入れられた。彼女を先に入れて、次に父が部屋に入るとすぐに部屋の鍵を閉めた。
「え、どうして鍵を閉めるの?必要無いと思うけど」
 あまりに意外なことだったので、声がうわずってしまった。
 父は彼女の質問に答えず、彼女に一歩踏み出して、こう言った。
「雫、大きくなったな。もうすぐ中学生か。かわいくなったものだ。もう第二次性徴を迎えてるのかな?胸が膨らみ始めてるのが見てわかるよ」

作品名:神待ち少女 作家名:ちゅん