小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-

INDEX|82ページ/89ページ|

次のページ前のページ
 

「もの凄く、歪な生き方だと思う。歪じゃない生き方っていうのが、何なのかって言われても直ぐには答えられないけど、他者を殺さないと生きていけないと言うのは、あまりにも歪んでいる。」
「でもね、親もいない、こんな力じゃまともな仕事は出来ない。収入がないから生きていけないのよ。仕方のないことだと思わない?それに、私の家系は、そもそもそういうもの、だったのよ。そういう生き方が、刷り込まれているの。殺しはいけないこと、と言われても困るわ。人間は生きる為に、多くの家畜を殺しているのに。動物達だって、他の動物を食べている。時には共食いもするわ。別に、歪でもなんでもないと思うけれど。」
「『何故人を殺してはいけないのですか?』なんて命題を真剣に考えていいのは中学生までだ。人間は他の動物と違って理性を持ち、理性からルールを作り、法律を生み出した。『法律で禁止されているから、人殺しはいけない』んだ。下らない、これについてこれ以上話すつもりはないよ。」
「そう。でも、じゃあどうすれば良い?事実として、私の家系は人殺しで、今までそれで生きてきた。そうしないと、収入がないもの。あなたは殺しが駄目だというけど、そうでなければ、私はどうやって生きればいいの?」
「…もうそれについては考えてきたのさ。」
 何時も行き当たりばったりな僕にしては、珍しく、ね。
「…こんな異能を持っている私でも、何か出来る仕事があった、のかしら?」
「否、仕事じゃない。でも収入の問題も、家の問題も解決出来る策さ。」
 そんな魔法のような方法、本当にあると思う人間はいないだろう。五条さんは、前髪で見えないけど、何となく疑り深いような、眉間にしわを寄せているであろう表情で僕を見ている。疑う気持ちも解る。今まで生きてきた十七年を、ある意味で否定されているようなものだろう。否、実際僕は、今までの彼女の生き方を否定しているのだから。だが、僕は生き方を否定しているが、彼女自身を否定しているわけではない。いくらでも、これからやり直せるはずなのだ。
「一体、どんな策なの…?」
 五条さんが乗ってきた。ということはつまり、彼女はこの生き方に多少なりとも疑問を持っているということだ。今まで一人で生きていくことで築き上げた、彼女の固定観念という大きな壁。その壁に、一つ小さな穴が空いた。その風穴を一気に広げ、壁そのものをぶち壊す…!