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【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-

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 若木町を騒がせた連続殺人鬼はこの世にはもう存在していない。連続殺人の中、私の仕事が露呈したのは少々焦ったが、寧ろ良い隠れ蓑になるのではないか、と期待もした。彼女は何故か、私が仕事をした日に限って、殺人をしていなかった。一日に一人殺すという彼女のサイクルに私の仕事も組み込まれていた。濡衣をかぶせる事も、出来たかもしれない。
 しかし殺人姫は、突如死んでしまった。依頼人の取り決めを変えるわけにもいかず、已む無く仕事をしたが、今度からは大々的に報じられるようになってしまった。構いはしないが、以前のようにオカルト雑誌の隅に載る程度の報じられ方の方が、気持ちとしては楽なのは確かだ。どちらにしても依頼人の耳には届くようにはなっているが、後の仕事に支障を来す可能性もある。この地も限界かもしれない。否、そもそも、こんな生活自体に無理があるのだ。しかし私にはこの生活しか出来ない。遺伝子が与えた異能は、こんな生き方を私に強制する。しかし、こんな生き方しか出来ないのに、それを楽しんでいる私もまた、居るのだ。
 場所を変えた方が良いのかもしれないが、未練はある。私を気にかけてくれる人、私の悩みを、打ち明けられるかも知れない人。ああ、この地を去る前に、彼にもう一度、会ってみても良いかもしれない。以前は、余り話せなかったな。もう少し、話せたらよかったのに。
 駅前は事件の以前のように活気づいている。殺人姫が死に、具体的な恐怖が取り除かれたのだろう。ああ、でも駄目だ、それくらいで緩んでいるようじゃ、まだ危機感が足りない。世の中には私のような者もいるのだから。
 家路を急ぐ。電話は来ていないだろうか、それだけが気になる。ここで仕事をするのはもう危険だ。今、依頼が来ても困るのだ。

 マンションに着いた。直ぐに二階へ登る。

 しかし二階の廊下で、よく見る人が居た。
 ああ、さっき、会いたいと思ったのが通じたのだろうか。

 でもなんで、

「こんばんは、五条さん。実は入院したっていうの、嘘なんだ。」

 なんでサングラスをかけているのだろう。