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【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-

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 洋館を後にすると直ぐに電話がかかって来た。液晶には「柏木弘人」という字が映し出されている。
「もしもし…」
「昨日俺の実家に来たそうだな。」
 行ったけどさ、もうちょっとその前に挨拶みたいな単語が入ってもいいよね。
「行ったよ。何、今日は非番なの?」
「俺の小学校の頃の卒業アルバムを見たんだってな。何かいい事でも載ってたか。」
 せめてもう少し会話がかみ合うようにして欲しい。
「どうした、なんか掴んだのか。」
 やけに勘もいいし、性質悪い。
「まぁ、一応掴みましたけど…警察のほうはどうなんですか、聞いていいんですか?」
「いいわけないだろ、と言いたいが、お前が掴んだ内容を言ってくれれば言わなくもない。内容如何だがな。」
 情報交換ということか。だが何処まで話したものか。
「十二年前の連続殺人事件って、知ってます?赤坂町の。」
「当時は中学生だったからな、詳しくは知らん。覚えてる程度だ。署内の先輩達はよく知ってたよ。獣に喰われたような遺体ってのに聞き覚えがあって、過去の調書を調べた。で、それが卒業アルバムを見た事と関係があるのか。」
「…まぁ、多分。」
「なんだ、やけに素直だな。」
 まぁね、一人で悩まないで相談しようぜ、って言ってしまった手前ね、なんとなく素直になってしまうものです。
「アルバムはともかく、今回の殺人事件の犯人に目星が付いたというか…」
「…詳しい話を聞かせろ。」
 よしよし、イニシアチブを取れるかもしれない。
「一般人の、高校生の話を信用するんですか?」
「内容による。」
「でも、もし間違ってたら、罪のない人の名前を晒すみたいだし、それは嫌なんで、そっちの情報もいくつか下さいよ。」
 ヒロさんは数秒、黙ったままだった。話が進まないので自分から聞いてみる。
「ヒロさんは、これが本当に獣の仕業だと、思いますか?」
「思わん。狙われているのは数多の業界に大きな影響力を持っている人ばかりだ。知能のない獣にしては偶然が過ぎる。これは人間によるものだ。」
「人間が、その獣を飼っている、とかは?」
「ないな、歯形に合うような生物はないし、そんな未確認生物を飼育して話題にならないわけがない。そんな生物がいるならサーカスの芸を仕込んで儲けた方が、殺しをするよりもリスクは低い。大体喰ってもいない。剥ぎ取られた肉はそこかしこに巻き散ってる。噛み切った肉を喰わずに捨てるような生物は存在しない。」
「…僕もそんな獣は存在してないと思ってるけど、警察がそう断じれるだけの根拠があったりするの?」
「唾液だ。何らかの生物が噛み付いているのだとしたら、傷口にその獣の唾液があってもいいもんだが、傷口からは血液しか検出されない。血で流れてる可能性もあるだろうが、どの傷口にも一滴の唾液すら検出されない、というのはおかしい。噛まれて出来た傷とは考えにくい。」
 唾液…成る程、それは僕には知り得ない情報だ。鑑定の方法なんてわからないからな。
「じゃあ、どうやって肉を剥ぎ取ったのか、判ったんですか?」
「全くわからん。どんな道具を使ったのか、皆目見当もつかない。」
 なるほど、警察はまず凶器を特定しないと始まらないのだろう。検問をするにしても、何を探せばいいのか分からないのでは検問の意味がない。
 しかし、今回はそれでは駄目なのだ。
「その方法に付いても、見当は付いてます。」
「…言え。」
「いいですよ。但し条件があります。」
「言ってみろ。」
「人殺しの獣は、今日捕えます。非番の柏木巡査長には悪いけど、警察の協力をお願いしたい。」
「…警察だけじゃ無理なのか。」
「ええ、この事件は、僕にしか解決出来ない。」