【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-
こってり豚骨に豆板醤をぶっ込み、白菜、豚肉、ニラの具材を放り込んだニンニクの香り漂うギトギトのスタミナラーメンを昼食として食し、エネルギーを充填した。
烏山は家から自転車で六分程走った場所にある。家には戻らずに直接向かった。帰るとまたなんのかんの言って家から出さない様にするだろう。それはお断りだ。説教なら帰ったあと受ける。
烏山の麓に着いた。本当に物好きな登山趣味の人くらいしかこの山に用がある人は居ないので、自転車の置き場が遭ったりはしないし登山ルートを描いてあるような親切な看板もありはしない。勿論階段なんてない。山頂に神社とかお社があればそんなものも出来るのだろうが、この山に居るのは烏と、獣と、死体だけだ。
仕方が無いので自転車は近くの公園に停めておく事にした。再び烏山へ。麓の東側に回ると、そこには道のようなものがある。物好き達が長い間、何度か踏みしめて出来上がった自然の道だ。ここが赤坂、大昔に、哀れにも獣に喰われた遺体から流れた血で赤く染まった坂。普通こういうのって、本当の坂だと思うけど、この地の赤坂は坂でもなんでもない、山登り達が作り出したただの道だ。地名詐欺だろ、これ。
まぁでも、坂が赤くなったってことは、その近くで人が襲われたって事で、つまりその付近には獣が住んでいる可能性が高いということだ。普通なら獣に怯えるところなのだろうが、実のところ僕は獣の存在をこれっぽちも信じていない。普通に考えてそんな存在が居るはずない(じゃあどうやって殺しているのか?って話になるが、それを知る為の今日の僕のこの行動である)。こんな眼を持っている僕が言えた義理ではないが…それだって人外の存在は、僕のように人の形をしていると思うのだ。大体、現代の獣は若木町で活動中だ。赤坂町の獣は十二年間ニート生活を満喫しているか、もう既に死んでいるかのどちらかだ。この地で恐れるようなものは何もない。
道は判りやすく、遠い昔の物好き共に感謝するばかりだ。そろそろ行動しないと、帰りに日付が変わっているのは流石に嫌だ。
作品名:【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ- 作家名:疲れた