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【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-

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「う、く、がっ」
 突如、誰かが苦しがる声が聞こえた。僕は、そんな高い声じゃない。これは女性の声だが、誰がこんな声を、否、これは染崎さんの声か。

「かっ、がはっ、あっ、」
 眼に見えて彼女は苦しみ始めた。頭をおさえていることから、息が苦しいというより、頭が痛いのか。彼女の指が頭部にめり込むまで、深く、突き刺さって。

「がぁ、ぎ、ぎ、ぎぎぎぎぎぎぎぎ」
 待て、おかしい、彼女の魂がおかしい。赤い彼女の魂が、塗り替えられている…?

 魂が、黒に、染まっていく————
「あが、がぎ、じ、じいいいいいいいいいいいいいがあああああああああああああ」

 黒は、黒い色は、死者を表す。

 彼女の赤い色が、死の色に染まっていく、否、塗りつぶされている。玩具の色が気に入らない子供が、サインペンで塗りたくる様に————
「だがか、が、ががががががががががががぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいがあああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 断末魔だった。眼から吹き出した血は眼鏡の内側に張り付き、耳からも血が流れていた。マスクに血が滲み、白目を向いている。
 絶叫しながら、彼女は崩れた。誰が見ても、明らかに死んでいるのが分かる。

 彼女の魂は、ペンキをぶちまけられたかの様に、無造作に黒い色に変色させられた。

「はあっはあっ、はっはっはっ……」
 見ていることしか出来なかった。目の前で人が、死んだ。

「なんっ、で、死んで、」
 死んだ、のか。

 現実から眼を背けるな、青原雪人。
「そうか、これって、」

 色を見分けるのがお前の力であるならば、覚えた色を塗りたくることも出来るだろう。

「これは、僕が、」

 認色の眼?なんとも生易しい名前だ。そこで転がっている彼女の方が名付けのセンスがあったかもしれない。青原雪人、お前のその眼はな、ただの眼じゃない。





 魔眼だ












「僕が、殺したんだ。」