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【完結】紅ノ姫君-アカノヒメギミ-

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『昨日の夕方九時頃に、神前市若木町で殺人事件が発生、女性の遺体が発見されました。被害者は同市に住む学生××××さん十七歳です。死体は四肢をバラバラに切り離された上で、それらが死体に突き刺された状態になっており…』
 朝のニュースが物騒な話を垂れ流している。
「やあねえ、また殺人事件だって。今度は何人目?」
「十四人目くらいじゃなかったっけ?」
「本当にやあねえ、若木町なんてすぐ隣じゃあない。」
 何時も黄色い母さんの色はここ最近暗めだった。が、十四日連続ともなると話題自体に慣れ切っているからか、元の色に戻りつつあった。
「大丈夫だろ、まだ赤坂町まで被害は及んでないんだ。要は若木町にいかなきゃいいのさ。」
「あなたは心配しなさ過ぎです!」
 父さんは心配なさそうにしてみせたが、母さんとは逆に色が昨日よりも暗くなっている。昨日は一昨日よりも暗かった。日に日に暗くなっているってことはつまり、ただ強がっているだけってこと。
「あらあら、こんなぶっそうになってぇ〜。そういえば昔こんな事件があってなぁ〜。赤坂っちゅう坂の上でなぁ〜。」
「ばあちゃん、それはもういいよ。」
 僕のばあさんは最近の出来事を昔の出来事と結びつけるのが大好きだ。所謂「今時の若者は」みたいなものか。いやまあ、多少違うけど。特にこういった何かしらの「事件」を昔のことを結びつけるときは「赤坂の坂の上」という出だしが相場だ。子供の頃聞いたときは、それは怖い話だったが、よくよく考えて見ると出だしは全て「赤坂の坂の上」であり、そのあとに続く話もこれまたよくよく考えてみるとどれも似たり寄ったりな内容だった。
 とどのつまり、ばあさんは同じ話をただ繰り返してるだけだったということだ。
「ていうか朝から気が滅入るニュースなんて流して欲しくないよね。」
「んまあ、確かに気が滅入るかもしれないが、これは隣町で起きてることだからな。どっか遠い田舎で起きたような事件は気が滅入るだけだが、こういった近い地域での事件の報道は自分の気を引き締めることが出来るだろう?」
 父さんの意見は概ね正しいと言える。だけど、
「そう言ってどれだけの人が気を引き締めることが出来るのかねぇ。」
 一人小声で呟いた。人間というものは他人に無関心であるどころか、自分にだって無関心だ。このような近い地域で起こっている連続殺人事件にだって、「隣町だから」という理由で我関せずのスタンスをとっている人はかなり多いだろう。何より僕がそんな「我関せず」の一人だ。
「雪人、とにかく夜は早く帰って来るのよ。特に若木町には行かない方が良いわよ。」
「うん。そんなことはわかってるよ。」
 何たってその台詞を聞くのは十四回目なのだから。